Club Interview vol.003 アメリカンフットボール部 神保 昴平(じんぼ こうへい)さん 心身科学部心理学科3年生

1966年(昭和41年)創部。部員数30名。東海リーグに所属。春季リーグ、8月の合宿を経て秋季リーグで日頃の成果を発揮。週5日の練習も充実。数々の戦略を練り試合に挑む。 大学から始めるスポーツ

01 未経験者9割以上

アメリカンフットボール部について教えてください。

東海リーグに所属し、今年で創部55年を迎えました。部員は約30名います。その9割以上が未経験者、大学からアメフトを始めています。アメフトはオフェンス11人、ディフェンス11人で戦うスポーツで選手交代は自由、何人でも何回でもでき、部員全員が活躍しています。

未経験者が9割以上とは驚きです。

野球、サッカー、陸上、ラグビー経験者から、弓道、中には吹奏楽部出身者も。幅広い部員で構成されています。オフェンス、ディフェンスにおいてそれぞれの役割があり、身長や体格に左右されることなく、自分の特性を活かすことができます。そのためどんな人でも始めることができるスポーツということが言えます。

経験者そして体格の良い人しかできないスポーツだと思っていました。

部員を見てもらってわかるとおり、体格の良い者ばかりではないです。仮に小柄でも、足が遅くても自分に合ったポジションは必ず見つかります。細くても上手い人はいっぱいいますよ。あと、高校生で(アメフトを)経験している人って少ないです。野球やサッカーを大学から始めるというのは、難しい話だと思いますが、アメフトは数あるスポーツの中で大学から始めることができる。つまりスタートラインがみんな一緒だからこそ、誰にもチャンスがあるスポーツだと感じています。

大学から始められるスポーツ。いいですね。

新しいことができる新鮮さもありますが、それ以上に達成感、充実感があります。昨日できなかったことが今日できるようになる。そういう嬉しい出来事が毎日のようにあります。また教える側も教えた相手に自身の成長を感じとってもらえることで充実感があり、毎日が刺激的です。

活動内容を教えてください。

1年間のスケジュールは4月に新入生勧誘があり、5・6月には練習試合があります。8月に合宿があって、その成果を示すべく9・10月には秋季リーグがあります。

日頃の練習内容はどのようなものですか?

基本、平日は4限終了後(16:40)からです。週5回(火水木土日)、20時頃まで、ここ人工芝の第一グランドで練習をします。ウォーミングアップから始めて、ポジションごとに分かれパート練習を20分ぐらいします。パート練習とは、キャッチ専門ならキャッチを、守る方はタックルの練習をというものです。その後、フォーメーションの確認など本格的な練習に入ります。

02 大切なAgility(俊敏性)と戦略

アメフトにおいて上手い選手とはどういう人を言うのでしょうか?

人それぞれ解釈が違うと思いますが、Agility(アジリティ)が高い人です。アジリティというのは聞き慣れない言葉かもしれませんが、反応の速さ、俊敏性を意味します。例えば、ディフェンス側だとオフェンス側が何をやってくるかわからないので、それに対して瞬時に状況を判断し、対応できるということです。

確かにその場、その場で状況が違いますね。

オフェンス側はそういった状況判断をしたディフェンスを交わさないといけません。そこにも俊敏性が必要になってきます。また攻撃側にも守る人が必要になります。身体の大きい人がしっかり守って道を開けることで、その俊敏性を活かせる環境が生まれるのです。

なるほど。それぞれ役割がありますね。

そうです。最初に、どんな人でも、その人に見合うポジションがあると話をしました。攻撃においてでも、ランやパス、タックルやブロックなど、その役割によって機動性が求められたり、パワーが求められたりと役割は違いますし、守る際にはプレッシャーをかけたり、判断力が必要だったり、もちろん相手を留めるパワーが必要だったりと求められることが違います。自分の得意な所で勝負できるのもこのスポーツの醍醐味です。

でも、アジリティを高めるというのは難しそうに感じます。

確かに簡単なことではないのですが、僕たちも最初は、鬼ごっこから始めました。鬼ごっこなら誰でも一度は経験したことがあるでしょう?相手の動きを見ながら、フェイントをかけたり、下がったり、一気に前進したり。あの動き、あの攻防はまさにアメフトの基本となるものだと思います。

確かに鬼ごっこなら誰もが経験ありますね。

アメフトって何か難しいスポーツに見えますが、案外、子供の頃から慣れ親しんだ動きが含まれているので、そういった意味でも誰もが始めることができるとスポーツといえます。

しかしルールを覚えるのは大変じゃないでしょうか?

どのスポーツにもルールがあります。だからそれを思えば、このスポーツだけが特別、難しいということはありません。未経験者がほとんどですから、都度ルール説明会を実施しています。なんの心配もありません。

未経験者でもできるスポーツというのがわかってきました。

あと、頭を使う人にとってもおもしろいスポーツだと思います。試合ごとに、戦略を練り、実践していきますからそれを考えていく過程が楽しいのです。

言われてみると1回、1回、攻撃の形態が違ったりしますね。

戦略を練るためには、相手の研究が必要です。敵チームの動きや傾向などを研究することをスカウティングと言いますが、他の試合へ出向いていってビデオで撮影し、相手のプレーを一人ひとりチェックします。相手の得意な所はどこか?ウィークポイントはどこかなど研究し、何度もミーティングを重ね、戦略をつくります。

その戦略を練習していくわけですね。

そうです。今日もマネージャーが練習風景をビデオで撮影していますので、一挙手一投足を戦略に適した動きをしているかチェックし、問題点をつぶしていき、試合に臨みます。

アメフトは戦略のスポーツ。興味深い話です。

アジリティとは俊敏性だと話をしましたが、それは単なる運動神経での反応ではなく、相手が何をしてくるか?その戦略を読むことに長けている必要もあります。そういった意味でもおもしろいのです。

03 社会性を持った人間形成をめざす

素人意見かもしれませんが、タックルなど痛くないですか?

それもよく言われますが、防具がしっかりしているから大丈夫ですよ。プロテクターは頑丈ですからね。 もちろんスポーツですからケガすることもありますが、トレーナーがいて日頃から身体をケアしてくれていますし、また万が一ケガをしても応急処置やリハビリにも関わってくれます。

どんな人がトレーナーをやってくれているのですか?

心身科学部健康学科の学生です。医学的な見地に基づき予防・治療の両面から学んでいる学科なので、そこで学んでいるトレーナーがいることで僕たちは安心してプレーができます。

マネージャー、トレーナーとも欠かせない仲間ですね。

そのとおりです。それ以外にも例えばケガをしていて試合に出ることのできないメンバーも一生懸命、声掛けをしています。このクラブの雰囲気が良いのは、全員が一丸となっているからです。

何か他に心がけていることはありますか?

ルールは必ず守るということです。競技中に紳士であるということだけではなく、挨拶や時間にも厳しいということです。単にクラブ活動を楽しむだけではなく、アメフトを通じて社会性を持った人間形成を目指しているのです。

最後にメッセージをお願いします。

僕自身、入部したての頃は細かったのですが、今は筋肉もついて身体つきも違ってきました。特別きついことをやったわけでもなく普段の練習を続けることで変化してきました。なんでもそうですが、最初からできることはなくて、継続することで身についていきます。その成長、達成感がアメフトにはあります。大学からスポーツを始めて試合で堂々と戦うことができることも醍醐味です。みんなでこの魅力を分かちあえたら嬉しいです。部員だけではなく、マネージャー、トレーナーの仲間も募集しています。

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取材を終えて

「アメフトには他にないおもしろさがある」。それが神保君の話を聞いて最初に感じたことでした。特に戦略を練りあげていく過程や、それを繰り返し練習していく様子は印象に残りました。刻々と変わる状況、相手との駆け引き、11人がそれぞれの役割に徹し、相手の陣地を攻め入る。その背景には、日頃の研究と練習があるのだと改めて感じ入りました。そしてその戦略には、敵を自陣に入れないようブロックするもの、パスを受け自陣を広げるもの、走るスペシャリストなど、様々な要素が重なり合っています。大学からみんなで一斉スタートを切れるスポーツ。多彩なポジションがあるアメリカンフットボールという新しい経験を通じて、隠れた自分の才能が見つかる。そんな気がしました。いつか試合を生で観戦したいです。ありがとうございました。