Club Interview vol.016 混声合唱団グリークラブ 田原 拓弥(たはら たくや)さん 文学部日本文化学科2年、石賀 ハルミ(いしが はるみ)さん 法学部法律学科2年

今年、創部60周年を迎える歴史あるクラブ。からだ全体を楽器と化し、日々の訓練で、音域を広げる。唱う楽しさ、声をあわせる感動、それを観客に届ける達成感。入学式などの学内行事ほか様々なイベントで合唱を披露する。2015年2月には、OG・OB合同の60周年記念コンサートを実施予定。 唱う楽しさは、「合わせる」ことで感動になる。

01 創部60年。学生主体で多様なイベントに参加。

混声合唱団グリークラブについて教えてください。

【田原】

今年で創部60年を迎える、歴史のある合唱クラブです。もともとは、男声合唱からスタートしたと聞いています。

【石賀】

部員数は男女合わせて24名。男性のパートは、高い音域を担当するテナーが7名、低い音域を担当するベースが5名です。女性のパートも同じ割合で、ソプラノが7名、アルトが5名となっています。

日頃の練習内容について教えてください。

【田原】

練習は、毎週、月・水・金曜の17時から19時に、学院会館または6号館5階6501教室で行っています。練習の流れとしては、まず肩や首を中心に筋肉をほぐし、からだ全体をリラックスした状態にさせます。次に、指揮者が思うままの拍で手を叩き、それに合わせて息をはき続ける「ブレス」を行います。4拍、8拍、12拍というように順に伸ばしていき、次は逆に短くしていきます。

【石賀】

ブレスが終わったら、発声に移ります。まず行うのは鼻から息を出す「ハミング」です。次に、母音による発声をして、のどを温めていきます。これらが終わったら、いよいよ曲の練習へ。それぞれのパートや全体で合わせながら練習していきます。

年間スケジュールについて教えてください。

【田原】

大学の式典およびイベント、地域の合唱祭、単独演奏会、合宿です。まず、大学の式典。4月の入学式では、校歌や宗歌などを吹奏楽部とともに演奏します。また、新入生歓迎パーティーとして、学院会館を借りてミニコンサートを実施します。4曲ほどのプログラムで、混声合唱団グリークラブに興味のある新入生を対象としています。10月には創立記念式典、3月には卒業式に参加します。

【石賀】

地域の合唱祭というのは、『愛知県合唱祭』です。今年で53回を迎える、歴史のあるイベントです。稲沢市にある名古屋文理大学文化フォーラム(旧稲沢市民会館)で、11大学のクラブを含め、愛知県内の様々な合唱団が参加して行います。一般の人も参加可能です。

【田原】

単独演奏会は2回あります。1回目は9月に開催する秋の演奏会です。3ステージとアンコールで約2時間、演奏します。2回目は同様の内容で、2月に定期演奏会を行います。次回は、60周年記念として、三井住友海上しらかわホールにおいてOB&OG合同で演奏会を行う予定です。

【石賀】

合宿は、それぞれの単独演奏会の直前、8月と2月に行います。演奏会で唱う曲を選び、自分たちのスタイルにあわせて表現などを作り込みます。

コンクールには出場していないのですね。

【石賀】

はい、出場していません。私たちのクラブは主に学生の自主的な活動で展開しています。単独演奏会を開催するには、練習以外にも様々な準備を行う時間を要するため、コンクール出場の準備と併せて進行することはできないと判断しました。

確かに、単独の演奏会は、準備が大変そうです。

【田原】

曲目の選定および練習だけでなく、会場の予約に始まり、愛知県合唱連盟への後援依頼、観客を呼び込むための様々な宣伝活動も行います。ビラを制作して、他の大学の演奏会で配布したりもしなければいけません。そういった準備を地道にすることで、例えば秋の演奏会では、例年、200人弱くらいの観客を集めることができているのです。

02 実は、未経験者ほど習得しやすい。

おふたりの入部のきっかけを教えてください。

【田原】

中学と高校ではテニス部に所属していたのですが、大学では新しいことがしたいと思いました。もともと唱うことが好きで、カラオケへ頻繁に行っていたこともあり、その趣味が高じるかたちで入部を決めました。

【石賀】

実は、私、中学はバレーボール部、高校では柔道部に所属していました。その流れで運動部に入ることも考えたのですが、幼い頃から続けてきたピアノを活かしたいとも考えていました。それで、ピアノをするならば伴奏を担当したいと思い、選んだのがこのクラブだったのです。

入部してみてどうでしたか。

【石賀】

今は、ピアノの伴奏ではなく唱い手をしています。唱うって本当に楽しいです。また、皆の声を合わせると、楽しさは感動に変わりますね。皆が一つになっている心地よさはたまらないです。様々なパートが重なり合うと、「こんな音になるんだ……」と、数多くの楽器による演奏を聴いているかのようです。

【田原】

私が感動したのは、演奏会で観客から拍手をいただいた瞬間です。合唱の練習は、基本的には淡々と同じことを繰り返すのでしんどい時もあるのですが、会場が拍手で満たされた時、達成感と充実感で胸がいっぱいになります。あれは体験した人にしかわからないですね。

入部して、すぐ唱えるようになるのでしょうか。

【田原】

いいえ。私は最初、とても驚きました。合唱での唱い方って、カラオケの唱い方とは全く異なっていたのです。合唱での唱い方は、のどをあまり使いません。「息に声をのせる」感じで唱うのです。からだ全体で呼吸をコントロールして、からだ全体で音を発します。これができるようになってくると、のどを痛めることもなくなってくると思います。

【石賀】

付け加えて言えば、重心を低い位置に保って唱います。重心が高い位置にあると、声が上ずりやすくなります。だから、下半身がしっかりしていることは大事です。

【田原】

また、体幹も使いますね。スポーツに近い部分があるかもしれませんね。

そういえば、おふたりとも運動部に所属していたと言ってましたね。

【田原】

はい。私たち以外にもスポーツ経験者は結構います。合唱は体力を使うので、運動部で培ったものは役に立っているかもしれませんね。

【石賀】

確かに、腹筋など鍛えてきたおかげで、しっかりと声が出せています。でも、もちろん、運動部経験者じゃないといけないことはありませんよ。

経験者の割合は全体のどれくらいを占めますか。

【田原】

約4割といったところでしょうか。経験者の人は声の出し方を知っていますが、知っているがために苦労することもあります。経験者の人には、これまで身につけた声の出し方があるので、声質の不一致など、このクラブで一緒に唱う際には、クセを直すことが必要となる場合があるのです。

【石賀】

逆に、大学から始めた人は何もクセの付いていない状態からスタートするので、スムーズに唱い方を身につけられます。だから、未経験でも全く問題ないのです。

03 出せない声が出るようになる嬉しさ。

誰もがぶつかる壁のようなものはありますか。

【田原】

人それぞれですが、出せる音域には限度があります。でも、曲によっては、限度以上の音域を求める内容があるわけです。その時に壁にぶつかりますね。

そういう時はどうするのでしょうか。

【石賀】

ひたすら頑張る、というのも一つの方法ではありますが、それこそ限度があります。出ない音域が出るようにする方法として、まず「出し方を変える」ことが挙げられます。腹式呼吸やのどの開き方など、様々な技術を磨いていくことで出せるようになる場合があります。簡単に高い音域を出す手法としては、ファルセット(裏声)を使うのも良いです。

【田原】

そういう壁を乗り越えてきている先輩たちに相談すれば、アドバイスをもらうこともできます。

【石賀】

クラブには、技術アドバイザーおよびボイストレーナーの先生がそれぞれ1人ずつサポーターとしているので、先生に尋ねるのも良いと思います。

いま抱えている課題を教えてください。

【石賀】

秋の演奏会や定期演奏会といった単独イベントで、もっと観客を呼べるようになりたいですね。練習の成果をもっと多くの人に届けたいです。

【田原】

この課題をクリアする方法としては、今以上に、聴いていて楽しくなる演奏会を作らないといけないと考えています。曲の構成や、唱の技術を、さらに磨いていくことが重要だと思っています。そのためには、より多くの合唱好きの部員に入部してもらうことも大切です。

混声合唱団グリークラブに向いているのはどんな人ですか。

【田原】

まず、唱うのが好きな人ですね。唱がうまくなるには、確かに技術の向上が大事ですが、何よりも唱い続けられることもポイントですから。

【石賀】

楽器をやっていた人も向いていると思いますよ。きっとある程度音感ができあがっていると思うので、唱い方を身につけやすいと思います。

最後に高校生へメッセージをください。

【田原】

唱うって、自分のからだを楽器にすることです。誰にでもできることです。でも、だからこそ、奥が深いと言えます。技術を磨き、自分という楽器に新しい音域を身につけた瞬間って、ちょっとした感動です。興味のある人は、気軽に学院会館へ足を運んでもらいたいです。

【石賀】

単独演奏会を開催することで、他大学の人や、OB・OGの先輩方、業者の方など多様な人たちと話をする機会も生まれます。様々な出会いを楽しみながら唱に夢中になる4年間を、ぜひ。

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取材を終えて

混声合唱を聴いたのが初めてだったこともあり、取材場所に足を踏み入れた瞬間、思わず聴き入ってしまいました。練習中の会場を包むやわらかな音声。いくつもの声が重なって響く美しい和音……。声というより、まさしく、楽器だと思いました。さらに、その声を出すために行っている日々の練習や、新しい音域を生み出す際の努力について取材することで、奥の深さに触れました。“合唱”という、一見シンプルな活動の裏にある面白みを掘り下げていき、その方法を受け継いでいく。そこに、ある意味、「研究」に似た凄みを感じました。混声合唱団グリークラブの皆さん、今後のご活躍を期待しています。今回は、良いお話をありがとうございました。