Club Interview vol.020 日本拳法部 伊藤 茜(いとう あかね)さん 法学部法律学科

1964(昭和39)年、創部。「中部日本学生拳法選手権大会」男子団体戦6連覇中。2015年は女子個人戦優勝も果たしている。防具を着装して思う存分に撃ち合う流儀と、手厚い指導を受けられる環境が、学生をのびのびと成長させていく。 思う存分に、撃ち合える。成長できる。

01 安全な武道を、強豪大学で。

日本拳法とはどんな武道でしょうか。

面、胴、股当とグローブを着装した上で、殴打技、蹴り技、組み技、関節技を用いて勝敗を競い合う競技武道です。安全な防具を着用することにより、すべての実戦練習が可能となっています。試合は、男子が3分間3本勝負、女子は2分間3本勝負で行われ、2本先取した方が勝ちです。一本とは、主に、防具装着部(面・胴)へ、突きや蹴りが相手の受け技に妨害されずに的中した際に認定されます。試合では公平性を高めるために、3人の審判員の2人以上の認定を必要とし、審判員の意思表示は旗によって進行されます。

愛知学院大学の日本拳法部について教えてください。

創部1964(昭和39)年の伝統あるクラブです。中部日本学生拳法選手権大会・男子団体戦では、大会史上初の6連覇という成績を収めています。現在、部員数はマネージャーも含めて23名。男子17名、女子6名です。練習の時間は、月曜から金曜の17時から19時まで。アスレチックトレーニングセンター2階の日本拳法道場にて行っています。

日頃はどんな練習を行っているのですか?

最初に柔軟体操と突き蹴りの「基本技」と、足運びの「歩法(ほほう)」の練習を行います。次に、防具を着装しない状態で相手と向き合い、実戦と同様に動きながら突き蹴りの攻撃を寸止めにしてスパーリングを行う「空乱(くうらん)稽古」を行います。その後は、防具を着装し、止まっている相手に対して型を意識した攻撃練習の「打ち込み稽古」を行い、続いて試合と同様に実際に突き蹴りの打ち合いを行う「周り稽古」を行います。相手をローテーションで変えて順番に対戦していきます。防具稽古の最後は、試合と同様形式で行う「試合稽古」。それぞれが相手を決め、実際に審判が立ち合って、実施します。

年間の大会スケジュールについて教えてください。

大学の部は、6月に、男子団体戦の日本拳法全国大学選抜選手権大会、全国ブロック対抗女子学生団体戦、勝てば9月の全国大会(全日本拳法総合選手権大会)に出場できる中部日本学生拳法選手権大会があります。10月には、1・2年が新人として団体戦に出場する中部日本学生拳法新人戦大会と男女の学生個人日本一を争う全日本学生拳法個人選手権大会があります。11月には、新人が個人戦に参加する中部新人日本拳法個人戦優勝大会と男女の大学一を決める団体戦の全日本学生拳法選手権大会が行われます。

その他にも大会はあるのですか?

町道場に所属する社会人選手が出場する大会にも参加します。5月の愛知県民大会、7月の名古屋大会、11月の中部総合大会に出場します。他にも6月・9月・12月の年3回行われる昇段級審査も受験します。

合宿もあるそうですね。

はい。毎年、夏に1週間泊まりがけで練習を行います。昨年度は山梨県で実施しました。午前中の涼しい時間帯に走り込みをし、午後からは防具を着装して日本拳法の練習メニューをこなしていました。今年は9月に愛知学院大学内で合宿を行いました。合宿中には他大学への遠征および合同稽古も行い、充実した時間を過ごせました。

02 自分に最適の教え方に出会える。

伊藤さんは、先日、第40回全日本拳法総合選手権大会に出場されたそうですね。

はい。6月に開催された第55回中部日本学生拳法選手権大会で優勝して、全国大会への出場権を獲得しました。初戦は突破したものの、残念ながら2回戦で敗退となりました。大学生・社会人の日本一を決める大会なので、出場して試合ができたことは非常に良い経験となりました。

約1年3ヶ月の経験で地区予選大会優勝を飾ったのですね。すごいです。

自分でも驚いています。私は、大会に出場したのは今回の全日本拳法総合選手権大会で5回目です。初めての大舞台の試合は、入部して約半年で出場した、10月に行われる全日本学生拳法個人選手権大会です。これは、東日本・中部日本・西日本の女子学生の頂点を決める大会です。出場しましたが全く歯が立たず惨敗でした。その結果が悔しく、より一層稽古に励み、今年6月の全国ブロック対抗女子学生団体戦では中部地区代表の一人に選ばれ、東日本と西日本の代表選手を相手に1勝1分の成績を残すことができました。

始めてわずか1年での好成績、過去に武道を習った経験があるのでしょうか?

いいえ、愛知学院大学の日本拳法部に入部するまで、武道を習った経験は全くありませんでした。「どうしてそんなに早く強くなれたの?」と、よく聞かれますが、理由があるとすれば、経験者の同級生や先輩、OBの方など、様々な方から受けられる指導のおかげだと思います。

様々な視点が身に付くということでしょうか?

いいえ。一つの技術を向上させるために、自分にぴったりのやり方を見つけられるということです。例えば、同じ技についての指導でも、人によって言い方や例え方など伝え方はそれぞれ異なります。だから、大勢の方に教わる機会があると、その中から、より実感しやすい指導法に出会えるチャンスが増えるのです。ずっとうまくいかなかったことでも、ちょっとしたひと言でヒントがつかめたりします。

男女が一緒に練習していることも、早く強くなれる秘訣のように感じます。

そうですね。それも大きいと思います。もちろん、男子は女子に手加減をしていると思いますが、基本的に男子は女子より動きが速いし、突きや蹴りも重いので、相手をしてもらっているだけでワンランクレベルの高い練習をしている感覚があります。その成果は、大会で女子選手と対峙した際、明確に表れます。

03 未経験だからこそ、どんどん成長できる。

伊藤さんが日本拳法部に入部した理由を教えてください。

高校3年生の時、愛知学院大学を志望していることを先生に話したら、日本拳法部への入部を勧められました。警察の逮捕術は日本拳法をベースに作られており、将来警察官になりたいと思っている私には日本拳法を身につけることが有益だと考えてくれたのだと思います。大学から新しい武道を習うのであれば、日本拳法はふさわしいと私も思いました。

スポーツの経歴は?また、武道や格闘技に対して抵抗はありませんでしたか?

中学・高校ではソフトボール部に所属していました。武道や格闘技に対しては昔から少し興味があったので、自分がやることについて、楽しみな気持ちはあっても、抵抗は全くありませんでした。特に、日本拳法は防具を着装して行うので、「思いっ切りやれそうだな」と感じました。

未経験者の割合はどのくらいでしょうか?

現在の部員の3分の2は未経験者です。しかも、元文化部などスポーツ経験者でない学生も大勢います。しっかりと稽古に参加していれば間違いなく強くなれるので、今までスポーツをしていなかった人でも大丈夫です。私は、練習量がそのまま成果に比例するのが武道の良いところなのではないかと思っています。センスとか運動神経はそれほど関係ないのではないかと思います。

日本拳法部に入部して変わったことはありますか?

スポーツは高校時代からやっていたので体力的な変化はそれほどありませんが、突きや蹴りへの対応を繰り返していることで、動体視力が良くなった気がしています。他には肚が座ってきたように思います。1年の頃から全国大会など大きな大会に出させてもらっていることで、大舞台で緊張することもそれほどなくなりました。

これまで、やめたいと思ったことはなかったですか?

ありません。未経験者からスタートした私にとって、ほとんどの内容が新鮮です。なかなか身に付けられなくて歯がゆい思いをすることはありますが、できた瞬間の「これか!」という気持ちはたまらないですね。また、練習で頑張った成果は必ず大会で出せるので面白いです。初めて挑戦していることだからこそ、成長できることがたくさんあるのです。『やめたいなんて思うはずがありません!』

高校生にメッセージをください。

練習した分だけ成長できるので、真面目に取り組める人が日本拳法に向いていると思います。また、武道や格闘技というと「痛い」とか「怖い」というイメージがありますが、日本拳法は防具を着装して行うので安全です。また、頑張れば最短で2年の秋には黒帯も取得できます。ちょっとでも面白そうだと思ったら、ぜひ道場まで足を運んでください。『女子、大歓迎です!』

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取材を終えて

道場に足を踏み入れた時、激しい撃ち合いの風景に圧倒されました。でも、しばらく見ていると、いつの間にか私の目に映る「激しさ」は「爽快さ」に変わっていました。きっとそこには、防具を着装していることで、突きや蹴りにためらいが生まれないという理由があります。でもそれだけではないように思えたのです。あとで伊藤さんから話をうかがって、「爽快さ」のもう一つの理由がわかりました。それは、充実した指導環境です。先輩やOBなどの方に教わるチャンスが豊富にあるから、自分は思う存分に頑張るだけ。未経験者だからこそ思いっ切りやらないともったいないのです。入部して、約1年3ヶ月で中部日本学生拳法個人選手権大会個人優勝という快挙を成し遂げた伊藤さんのような方が輩出されるのも、確かに頷けます。取材中の「日本拳法が楽しくてしょうがない」という表情が本当に印象的でした。伊藤さん、貴重な時間ありがとうございました。今後ともご活躍を期待しています。