まだ見ぬ国の文化に触れたい。

杉浦 綾子(すぎうらあやこ)さん 文学部 国際文化学科 4年

国際文化学科を選んだ理由は何ですか。

行ったことのない、いろいろな国の文化に昔から興味があったからです。英語をツールとして用いて、相手の国の背景にある文化に触れたいと願っていました。そんなことを考えながら進学先の選択をしている際に出逢ったのが、愛知学院大学の国際文化学科です。

愛知学院大学の国際文化学科について教えてください。

英語を、「聞く」「話す」「読む」「書く」というコミュニケーションの道具として身に付けるだけでなく、異文化をより深く理解する手段として捉えて訓練します。「英米文学」「言語学」「歴史学」「社会学」など多様な観点をそなえながら、音楽、映画、アニメ、食文化まで、あらゆる海外文化を研究対象に視野を広げていきます。教員が自らの海外での体験を活かして指導し、海外での体験を奨励。偏りのない価値観と豊かな自己表現のもと、世界の人々と真摯に対話できる人間としてのスキルが養える学科です。

なぜ様々な国の文化に興味を持ったのですか。

母が英会話を指導しており、幼い頃から海外旅行に出掛ける機会がありました。最初は、小学校2年生の時に行ったアメリカ。中学2年生ではオーストラリアに。高校3年生ではニュージーランドへ足を運びました。いくつかの国の文化にほんの少しずつ触れた経験が、他の国の文化に対しても好奇心を抱かせるきっかけになっているのではないでしょうか。だからこそ、他国の文化と交流することを目的に英語を学べる国際文化学科は、私に適していたのだと思います。

なるほど。では、国際文化学科の1年次の学びについて教えてください。

「オーラルコミュニケーション」や「ライティング」などの科目を取り入れながら、英語力の向上を図っていきます。同時に幅広い知識を身に付け、自分の興味のある分野を探求していきます。軸となるのは「国際文化入門」「英米文化入門」「アジア・オセアニア文化入門」などの基礎科目です。世界の多様な文化の入口に立って、4年間の学習・研究に必要な基礎知識と広い視野を身に付けます。

1年次の学びは、海外文化への扉ということですね。

私は、早く国際文化の専門的な講義を受けたいという思いで意気込んでいましたね。「2年次には必ず留学する!」という目標を立て、大学の講義を活かしながら特に英語力の向上に努めました。


留学先のボストンでぶつかった壁。

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2年次は留学したと聞いています。有言実行ですね。

1年間、アメリカのボストンに行きました。留学先の学校は、語学学校カプラン・インターナショナル・カレッジのハーバードスクエア校です。アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダなどで40校以上の語学学校を運営しています。アメリカの学生にも、学習塾としても利用されていています。

留学する国と都市はどのように決めたのですか。

できるだけ多くの国の文化に触れたかったので、安直かもしれませんが、「人種のるつぼ」と言われる多民族国家・アメリカを選びました。ボストンを選択した理由は、できるだけ日本人の少ない地域で学びたかったからです。だからこそ、西海岸よりは東海岸の都市が良いと思いました。

自分に厳しいですね。

日本語がたやすく通じる環境では、きっと甘えてしまうだろうと考えたのです。アメリカに行くならば、国の原点に行きたいという気持ちもありました。1630年、イングランドからやってきた清教徒たちの手によって築かれたボストンは、アメリカで最も古い歴史のある街です。また、ボストンにはハーバード大学やマサチューセッツ大学など有名な大学が集中していて、意識の高い人が集まっているように思いました。

実際に留学してみてどうでしたか。

まず、環境の良さを感じましたね。住んでいた場所が学生街だったこともあり、同年代の人が多かったので、友達はすぐにできました。私から話しかけなくても、道を歩いていると、日本人というだけで頻繁に声を掛けられました。

授業についてはどうでしたか。

いきなり壁にぶつかって、毎日のように泣きました。語学学校では、入学後、最初にペーパーテストが実施され、その結果に沿ってクラスの振り分けが行われます。でも、実際の授業で中心となるのは、当然、会話でのコミュニケーションです。留学する日本人学生の多くにあてはまることらしいのですが、ペーパーテストの点数は高く、上位のクラスに振り分けられますが、話す力のレベルが低いため、序盤で壁にぶつかるのです。私も同様でした。

どんな内容の授業なのですか。

例えば、様々な社会的な問題をテーマに挙げ、ディスカッションを行っていく内容です。伝わらない以前に、討論する内容のレベルが高くて、伝えたいことを言葉にすることすらできませんでした。


とにかく、いろんな国の友達をつくる。

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その壁は、どのように乗り越えたのでしょうか。

机に向かって勉強しているだけではどうしようもなかったので、とにかく友人をたくさん作って会話しました。幸い、語学学校には世界中から学生が集まっていたので、多様な国の学生と交流がもてたのです。「この社会問題について、あなたの国では、どんな意見が挙がっているの?それに対してあなたはどう思っているの?」と、社会的テーマを掘り下げていく会話を日常的に行いました。友人は皆、私の求める会話に真摯な態度で対応してくれたので、見事にレベルアップが図れたように思います。

驚くべき行動力です。どこの国の学生と交流したのですか。

特に多かったのは、中国や韓国出身の学生です。他には、南米、ヨーロッパなど。暮らしていた環境も活用できました。最初は現地の家庭でホームステイし、しばらくして他国の学生とのルームシェアを始めました。シェアしていた相手の出身地は、韓国に始まり、モロッコ、アメリカ、タイ、フランス、スペインなど、本当に多様に入れ替わりました。いろんな国の人と英語による会話を繰り返す過程で、「多様な文化に触れたい」という当初の目的の達成にも少しずつ近づいていった気がします。

他に、印象的な出来事はありましたか。

イスラム教の寺院にも足を運びました。イスラム教徒の友人がいたので案内してもらったのです。行く前はちょっと怖くて不安だったのですが、すぐに不安と感じたこと自体が失礼だったと感じました。寺院の方々にはとても真摯に対応してもらえました。アメリカ同時多発テロ事件の後に受けた強い風当たりについてなど、様々な話を聞かせてくれて、私にとってはかけがえのない体験となりました。


無力感を消してくれた出逢い。

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2年次からの、学びの姿勢に変化はありましたか。

あらゆることに対して積極的になったように思います。気になることはどんどん質問し、思ったことは発言するようになりました。2年次からは、専門分野の基礎知識を習得していくカリキュラムが進行します。興味のある分野の科目を選択し、いろんな視点や多様な価値観を身に付けていく中で、積極的な姿勢はプラスの効果をもたらしたのではないでしょうか。ただ、「もう一度留学したい」という思いを常に抱いていました。

他の国に語学留学したい、ということですか。

いいえ。ハーバード大学での聴講などの経験から、次は語学学校ではなく、大学に入学したいと思ったのです。早速、留学生がアメリカの大学に出願する際に求められるTOEFLのための勉強を開始しました。

TOEFLの具体的な勉強方法を教えてください。

グローバル英語学科の「TOEFL」という講義を履修しました。自分の目標に合わせて他学部・他学科のカリキュラムを履修できるのは、愛知学院大学の魅力の一つだと感じています。おかげで、アメリカの大学に出願するためのスコアを取ることができました。最終的に、様々な事情が重なって留学はしませんでしたが。

二度目の留学は断念したのですか・・・。残念でしたね。

帰国後の2年次は、二度目の留学を果たすために頑張ったので、挫折した時は無力感に襲われました。同時に何か物足りなさを感じてしまったのです。そもそも、日本とアメリカとでは文化が異なるので比較するべきではないのかもしれません。ただ、留学中に他国の学生と何度も交わした熱い議論や意見交換が思い返されました。

その後、物足りなさをぬぐい去ることはできたのでしょうか。

先生や友人など数多くの良い出会いが重なって、物足りなさを解消することができたように思います。中でも大きなきっかけをもたらしてくれたのが、3年次にちょうどウガンダから来日された外国人講師のサリ・ビック・ルクワゴ先生です。サリ先生は私に、途上国に国際協力するJICAが主催の「アフリカ総選挙」への参加を勧めてくれました。


JICAや学内イベントに参加して見えたもの。

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アフリカ総選挙とはどんなイベントですか。

大学生が中心となって、アフリカ各国のPRチームを結成。およそ一ヶ月かけてその国について調査し、ステージパフォーマンスとブース出展を行います。来場者にどこの国が最も良かったかを投票してもらうというイベントです。今回対象となった国は、セネガル、ルワンダ、エチオピア、ガーナ、ザンビア、マダガスカルの6カ国です。JICA中部の施設内で行われました。

イベントに参加してどうでしたか。

私が留学したい理由は、海外の文化に触れたいからです。それをはっきり思い返したと同時に、国内にいても、アフリカ総選挙のようなイベントに参加すれば、国際的な文化交流が簡単にできることがわかりました。自分が、イベントを企画したり、参加したりするのが好きだということも初めて知りましたね。また、以前アフリカにはあまり接点がなかったのですが、イベントを通して興味を持ちました。

「アフリカわっしょい!ウガンダ祭り!!」というイベントも実施したと聞いています。

アフリカ総選挙と同じく、JICAの協力で実施しました。ウガンダカフェやアフリカン音楽祭、アフリカン雑貨の販売、スタンプラリー、ウガンダに行った経験のある方の報告など様々なコンテンツをそろえ、当日は、たくさんの方に来場いただき、大盛況でした。

どういうきっかけで実施したのですか。

ウガンダでは、戦争と隣り合わせの日常の中、数多くの孤児が生まれています。先日、友人が足を運んだ小さな村にも孤児が10人以上いたとのことでした。サリ先生からもウガンダの様々な現状を聞いていたので、その友人と共に「何かウガンダの力になれることをしよう」と始めたのがきっかけです。ただ、悲惨な状況ばかりを前面には出しませんでした。ウガンダの楽しさを押し出しながら、一方で過酷な現状を知らせることで、応援の気持ちを募りました。

学内では異文化交流のイベントは行われないのでしょうか。

いろいろ行われていますよ。例えば、「English Lunch Club」という企画。留学生や学生、先生などが集まって和やかにランチを食べながら英語で雑談して、交流を広げています。場所は、大学本部棟1階のオープンスペース・A-cubeの一角です。愛知学院大学には約170名の留学生がいて、母国語が英語の学生もいればそうでない学生もいます。そんな恵まれた環境が気軽に活かせる機会として、とても便利です。また、これ以外にも、サリ先生たちが新しい企画を考案中と聞いています。

どんな企画でしょうか。気になりますね。

「English Lunch Club」の発展企画です。ランチタイムだけではなく、常に英語のしゃべれる環境を用意しようとしているとのこと。そこに行けば、英語の話せる担当者が必ずいるサロンのような空間、といった感じでしょうか。これには私も協力したいと考えています。秋にはスタートさせたいそうです。


国と人の関係を考える卒業論文。

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3年次からの学びについて教えてください。

英米文化演習・国際文化演習がスタートします。通称・プレゼミと言われています。通常15名以下の少人数クラスで、自分の選択した研究テーマの取り組み方、プレゼンテーションの方法などを学びます。これは、いま、4年次で行っている卒業論文制作に結び付いていきます。

選択した研究テーマについて教えてください。

私が調べているのは、日系アメリカ人と呼ばれる人たちについてです。日系アメリカ人とは、日本からアメリカに移住しアメリカの国籍または永住権を取得した日本人を指します。

なぜ、その研究テーマにしたのですか。

私は留学した際に、自分が日本人であることを再認識させられました。グローバルな視点で意見を言っているつもりでも、あらためてふり返ってみると、やはり日本人としての意見をぶつけている気がしました。それが自分自身であることは間違いないし、自分がずっと持ち続けていくバックグラウンドなのだと理解しています。そういった考えの延長線上で、バックグラウンドを変えた、もしくは系譜の中で変わってしまった日系人と呼ばれる方たちの意識が気になったのです。そこから人権問題や、アメリカと日本の問題を見通せることに期待を抱いています。

いま進んでいるところまで聞かせてもらってもいいですか。

はい。まず一世は、「私たちは日本人である」という意識が強いと思うのです。しかし、二世、三世になってくると日本にも行ったことがなく、親や祖父母が日本人というだけで日本について何も知らなかったりします。

複雑な背景ですね。

このような状況で、一世と二世のちょうど中間の時期に、太平洋戦争が勃発しました。そこでアメリカは、日系人を日本人として扱い、強制収容まで行ったのです。その際に日系人たちの中には、自分たちがアメリカ人だと認めてもらうために戦争の前線で戦った人たちもいたと聞きます。さらに戦争後は、三世、四世が中心となって強制収容に対する賠償問題の訴訟を行ったりしているのです。アメリカがアメリカ人を強制収容したことは間違っている、と。大変困難ですが、彼らの複雑な想いや考えを少しでも知りたい、理解したいと思っています。

大変興味深いテーマだと思います。

スケールが大きすぎて、担当の先生からは「もう少し絞ったほうがいい」とアドバイスをもらっています。現在は、文献などの資料を調べています。英文で書かれた本なども多いので、頑張って翻訳作業も行っています。まだ途中ですが、自分なりの考察を出して決着をつけたいですね。

最後に、高校生へのメッセージをお願いします。

私は、留学先でいろんな人に会い、多様な経験をしましたが、それだけでは足りなかったと思うのです。日本に戻って来て大学のいろんな先生の指導を受けて、初めて留学先の経験が深い学びへとつながりました。また、得た学びを活かせる場所を見つけられました。社会へ出る前の大切な期間を、愛知学院大学で送れて良かったと思います。これから入学する後輩の皆さんにも、多様な国の多彩な考え方に気軽に触れられる愛知学院大学で、貴重な時間を過ごしてほしいと思います。


取材を終えて

留学を経て帰国した人が、日本人の考え方や姿勢について文句を言う光景を、目にすることがあります。海外で得た経験は新鮮で刺激的です。日本の文化と比較し、ギャップを感じてしまうことは仕方がないことだと思います。杉浦さんのすごいところは、その気持ちを転換し、異文化交流は日本にいてもできることであり、大切なのは考え方だと気付いたところです。国際文化学科の学びの目指す場所は、英語を手段に、海外の人たちと、その国の文化まで理解した上で真に通じ合うこと。研究テーマについて話す杉浦さんからは、日本人としての誇りを持ちながら、多様な視点と価値観を備えている様子が伺えました。とても良い取材となりました。長時間ありがとうございました。

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