社会の諸問題の本質をつかみ、アプローチする力を育む学科。

富士本 凌 さん 法学部 法律学科 4年

愛知学院大学の法律学科を選んだきっかけは何ですか。

小学校の頃から社会の授業が好きだったこともあり、社会の事象について論理的に考える力が身に付けられる法学部法律学科を選択しました。

愛知学院大学の法律学科について教えてください。

法律学科では、まず法律の基礎知識を習得することからスタートし、その上で具体的な理念や条文の内容など法律に関する学習を、積み上げていきます。社会のルールである法律の知識をベースに、社会で起こるさまざまな問題の本質をとらえ、論理的にアプローチ・解決できる能力を養っていく学科です。

これまで学んだ中で、特に印象に残っている講義やカリキュラムはありますか?

「憲法」に関する講義が、特に印象に残っています。3年次のゼミでも、憲法の先生のゼミを選択していました。そこで挙がったテーマの中でも強く記憶に刻まれているのが「君が代の不起立問題」。いわゆる、公立学校の式典において国歌「君が代」の斉唱を拒否し、起立しない教職員についての問題です。何も知らなければ、あたりまえのように起立して斉唱し、終わることかもしれません。しかし、多様な考え方や信条を持つことで、豊富な選択肢が生まれ、「立たない」という一つの行動につながっているのだと思います。物事には多様な考え方があり、捉え方次第で様々な結果が生まれるということに大変興味を覚えました。

ゼミは、ずっと憲法の分野を専攻しているのですか。

いいえ、1・2年次には、民法の分野のゼミを専攻していました。法学部のゼミの選択方法は他学部とは少し異なるのです。一つの分野を掘り下げていくことも可能ですが、目的に合わせて1・2年次では半期ごと、3・4年次では年次の変更時に履修する分野を変えることができます。また、法学部はゼミの形式も特徴的です。先生の指導を受けながら、主にディベート形式で進行していきます。学生が主体となって自らテーマを設定、関連資料を収集・調査し、綿密な下調べの上で徹底した議論を展開させていきます。

なるほど。では、ゼミを選ぶ基準になるのは何でしょうか。

2年次に選択できる3つのコースが一つの基準になると思います。法律学を総合的に学ぶのが「総合コース」。法律の専門分野の受験や法科大学院への進学を目指す人に適しています。「国と国民」「地方公共団体と住民」などに関する法律知識を身に付けるのが「公法コース」です。公務員志望の人や、国・地方自治体への就職希望の人に相応しいです。そして、「人と人」「企業と企業」などビジネスシーンにおける法について幅広く学ぶのが「ビジネスコース」。ちなみに私が選択したのは「公法コース」です。


監督の教えの下、まず自らを問いただした。

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ラグビー部のキャプテンを務めているそうですね。

はい。新チーム結成の際に、同級生のメンバーから選ばれました。ただ、僕は、自分に大勢を統率する力があるとは思っていません。他のみんなの力を借りながら、全員でチームを動かしていくという感覚でやっています。

力強く引っ張っていくリーダーではない、ということですね。

一般的にリーダーというと、強いリーダーシップで大勢を牽引していくイメージがあるかもしれません。でも、私にとってのリーダーシップは、ちょっと違います。まず自分自身を見つめ直し、磨き、成長させることで、周囲にいる仲間に「この人についていきたい」と思ってもらうことが大切だと考えています。実際、私はまず自分を問いただし、グラウンド上で一番の本気を見せることを心がけました。その結果、同級生の仲間たちがまず理解を持ってくれて、一つになることができ、次第に下級生たちも共感を抱いてくれて、チーム全体が一丸となっていけたように思います。

そういったリーダーシップ論に至るには、何かきっかけがあったのでしょうか。

きっかけは、チームのことについて監督に相談したことでした。実は、3年になったばかりの頃、私は当時のチームに対して、違和感を抱いていました。ラグビーは、身体をぶつけ合う、ある意味、危険なスポーツです。真剣に取り組まないと怪我をします。でも、だからこそ本気になれるし、仲間として通じ合えるのだと思っています。しかし、当時のチームは、ぶつかり合うことを避けているように感じていたのです。それぞれの代に、それぞれの正しい考え方があるとは思います。でも私は、そのやり方に、心のどこかで納得できていませんでした。そんな時、ちょうど監督に個人面談をしていただく機会があり、想いの丈をぶつけたのです。

監督はどんな言葉を返してくれたのでしょうか。

言葉、というよりも、私自身が思っていることを引っ張り出してくれたような感覚でした。自分では実は思っているのに自覚していないことって、ありますよね。それを全て吐き出させてくれた上で、「じゃあ、お前がそれを変える立場になればいいんじゃないのか?」と言ってくれたのです。また、さらにこう続けました。「それで、お前は、チームに対して何かアプローチしているのか?変えたいのならば、『フォロワーシップ』を身に付けて、チームに対してアプローチしていけ」と。その個人面談以降も、監督は、何度も私の相談に乗ってくれました。1回の相談の時間が3~4時間にわたることもありましたが、じっくり聞いてくれました。

ありがたい存在ですね。

監督がいなかったら、今の私は存在していないです。本当に感謝しています。監督への相談を経て、チームに対してのフォロワーシップとは何か、リーダーシップとは何か、その本質について深く考えさせられました。結果、ミーティングの場での発言を増やすなど、私は自分の考えや行動を少しずつですが変えていったように思います。


初めて参加したリーダーシップトレーニング研修。

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富士本さんは、最近、リーダーシップトレーニングに参加したそうですね。

はい。3日間にわたって、長野県大町市にある大町セミナーハウスという施設に泊まりがけで参加しました。リーダーシップトレーニングは、愛知学院大学が行っている研修のひとつで、クラブやサークルのリーダーを対象に、グループワーク、系統別懇談会、講習などを通してマネジメント能力の向上を図るとともに、リーダーの持つべき姿勢について学びます。

グループワークではどんなことを行ったのですか?

3つのグループに分かれて、「チーム作り」「ハラスメント」「目標設定」「危機管理」などのテーマに合わせゲームをしたり、講習を受けたりしました。

楽しみながらリーダーに必要なことを学んでいくのですね。系統別懇談会では何を行ったのですか?

「部員の確保について」「モチベーションの格差」「部内コミュニケーション」といったテーマ別に、それぞれグループに分かれてミーティングを繰り返しました。各グループを担当する先生のもと、課題を出し合って、解決法などを話し合いました。私のグループでは「部内コミュニケーション」をテーマに、部内の上下関係について討論。ラグビー部は、上下関係ははっきりしていますが、グラウンドの外では上下のない気さくな関係という、ベストだと考える状況ができあがっているので、どちらかといえば客観的な視点で参加していました。

最終日には、懇談会グループの代表として発表したと聞いています。

ミーティングでは、上下関係がないことでコミュニケーションが取れて良くなるクラブと、上下関係がないことが練習にも持ち込まれてメリハリがなくなるクラブの問題が例に挙げられていました。これに対する一つの答えを発表しました。

どんな話をしたのですか?

前述したような上下関係の問題は、普段の上級生の行動が鍵なのだと私は思っています。上に立つ者がどんな振る舞いをしているのかを、下にいる人たちは本当によく見ています。だから、大事なのは、下級生に厳しくすることではなく、自分たちがどういう覚悟を持ってグラウンドや競技場に立っているか。まず自分たちの姿勢を見つめ直し、問いただすことが問題解決への近道になる、と話しました。


キャプテンとしての覚悟。大学のラグビーの楽しさ。

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今、富士本さんにとっての「覚悟」とは何ですか?

「常にラグビーのことで時間を費やす」。それがラグビー部キャプテンとしての僕の覚悟です。休み時間も、休日も、いつだってラグビーのことを考えて、ラグビー部のためになることをしています。これ、意外に難しいのです。天気の良い週末など、「どこか遊びに行こうかな」と思う時もありますが、これがもし試合が間近の日であれば、試合のために身体を休ませます。24時間、様々な誘惑に負けずに過ごすことはなかなか大変です。でも、私は、覚悟として決めたことなので実行しています。勉強についての覚悟は、「関心を抱いた内容にはためらわず挑戦していく」。これまで、ゼミでは民法と憲法を専攻してきましたが、さらに新たな領域を学んでみたいですね。なかった知識を習得するのは、大変ですが、楽しいです。

リーダーシップトレーニング研修に参加して良かったと思うことはなんですか?

研修において新しく学ぶ部分は数多くありました。でも、この3日間を終えてみて、「良かった」と思えたのは、実を言うと、今、自分がいる場所の素晴らしさを再確認できたことなのです。本気でラグビーの楽しみを追求したいと思っている仲間が集まり、同じ思いを持って真剣にぶつかり合える。そういう素晴らしい場所にいる事実をあらためて確認でき、喜びを覚えました。また、このラグビー部で、キャプテンをしていることに誇りを感じました。

実感がこもっていますね。ところで、そもそもラグビーを始めた理由を聞いてもいいですか?

出身高校である名古屋市立西陵高校でラグビー部に入部したのがきっかけです。同学年男子の約半数がラグビー部に所属していて、何となく雰囲気で始めました。高校時代の練習は、大学以上にハードだった記憶があります。ただ、残念ながら私は今のように本気で取り組めていなかったように思います。

なぜですか?大学のラグビー部は、高校とどうちがうのでしょうか?

どちらかと言えば指示されるがまま動いていた高校時代に比べ、大学では、考えながらプレーすることが求められます。もちろんコーチからの指示はありますが、グラウンド上では、プレーヤーが様々な選択肢を持ちながらプレーしています。どんな行動を選んで目的を達成するかは自分たちプレーヤー次第なのです。さらに、その行動が実を結ばなかった場合は、原因について考えます。その時は悔しいですが、次の機会に成功したり、新しい発見に出会えたりすると、喜びや達成感は一層、膨らみます。

考えながらプレーしているからこその喜びであり、達成感ですね。

はい。自分のことだけでなく、他の部員が成功した瞬間を見ることができたり、成長している姿を確認できたりした時にも嬉しくなりますね。


迷ったときは、自分自身を尊敬できるような選択を。

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将来の夢はありますか?

教師になりたいです。公法コースを選択しているのも、そのためです。ただ、教師になる前に、様々な体験をしておきたいという想いがあります。多様な体験をしていてこそ、初めて生徒たちに語れる言葉があるのではと考えています。そこで、まず入社したいと思い描いている会社があります。

どんな会社ですか?

支援を必要とする地域に寄り添い、支えるような会社です。発端は、1年次に、ラグビー部で宮城県気仙沼市に行って行った東日本大震災のボランティア活動です。現地では側溝の掃除を行いました。長い時間をかけながら担当の範囲を終えたのですが、市全体から見てみれば、ほんの一部の側溝を掃除したに過ぎないことに気付き、愕然としました。でも、被災地の方々からは大変な感謝をされたのです。「感謝されるべきことは、全然できていない……」と、自分に無力感を覚え、情けなくなりました。そうやって落ち込んでいる時に、同じグループで側溝の掃除をしていた人がぼそっと呟いたのです。「みんなでやれば、あっという間だ」と。その時に、大勢の仲間と一つになって支援ができる場所に行きたいと思いました。

大変な仕事であり、まさに覚悟が必要だと思います。

もちろん、どんな仕事に就いたとしても覚悟を持って取り組むつもりですが、できることならば、最初に社会で覚悟を持って臨むのは、前述したような会社でありたいと思っています。

最後に高校生にメッセージをお願いします。

今後、歩んでいく人生の中で、もし何かの選択に迷った時は、自分自身を尊敬できるような選択をするべきだと思います。置かれた立場や環境によって様々な必要性や誘惑があったりもするでしょう。でも、今一度、自分を見つめ直してほしいのです。自分自身を尊敬できる行動を選択した際には、きっと覚悟を持って取り組むことができるはずですから。


取材を終えて

富士本さんの取材で何より強く感じたのは、物事の本質をとらえる力とそのスピードでした。法律学科での学びは、一見、非常に複雑な印象があります。しかし、憲法のゼミで関心を持ったという「君が代の不起立問題」に関して説明をしてもらった時に、内容とともに憲法の講義についての本質までスムーズに伝わってきました。かつてラグビーのチーム状態について高田監督に相談した際も、富士本さんは、きっと、リーダーシップやフォロワーシップについての本質をすぐに理解し、自分がすべきことへ落とし込んだのではないかと想像できました。本質をつかむことが上手な人は、それを実行することも、誰かに伝えることも恐らく上手なのでしょうね。今後の富士本さんの歩み、そしてラグビー部の活躍が、非常に楽しみです。長時間の取材と撮影にお付き合いいただき本当にありがとうございました。

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