憧れから、実現したい目標となった。消防官の夢。

新谷 太康(すぎまち りさ)さん 総合政策学部 総合政策学科4年

どうして消防官になりたいと思ったのですか。

最初のきっかけは、親戚に消防官がいたことです。子どもの頃に私にとって、オレンジの救助服は非常に格好良く見えました。それからずっと心のどこかで憧れを抱いていましたが、それは非常におぼろげなもので、大学選択の直接の理由とはなりませんでした。消防官になりたいと強く思ったタイミングは、愛知学院大学への入学が決まった春休みのことです。何となくテレビを眺めていた私の目に飛び込んできたのは、東日本大震災の光景。かつて見たことのない悲惨なシーンの連続に、涙が止まらなくなり、画面の前から動けなくなりました。

そこで救助活動をしていた消防官の姿に心を動かされたわけですね。

ただ、消防官を志したいと思った理由はそれだけではないのです。私の実家は福井県にあります。福井県は、ご存じの通り日本海を抱いた地域であり、多くの原子力発電所が所在する場所でもあります。もし東日本大震災のような津波が発生すれば、当時の東北地方と同じような大惨事が起きると考えます。家族をはじめとした大切な人たちを守る仕事がしたい、と思いました。その時、私が以前から消防官に憧れていたことを知っていた父が、「試験、受けてみたらどうだ?」と勧めてくれたのが、具体的に消防官を目指し始めた直接のきっかけです。

消防官になるための勉強は、独学で行ったと聞いています。

はい。東日本大震災後、一刻も早く消防官になりたくて、自分でどんな試験内容か調べて受験対策を始めたのです。でも、大学2年次に挑戦した1度目の試験では失敗してしまいました・・・。1次の筆記試験と体力試験には受かったのですが、2次の論文と面接が不合格だったのです。論文では、何を書いて良いかわからず、また、面接では面接官の質問に対して的確な返答ができなかったように思います。それまで味わったことのない悔しい思いをしました。

それは残念でしたね・・・。

20歳を過ぎた大人でありながらも、あまりに悔しくて泣きましたね。高校受験はスポーツ推薦だったので、私にとっては初めての挫折でもありました。でも、父からは「早めに挫折できて良かったんじゃないか?」と言われました。私は消防官の仕事に対してまだまだ甘い気持ちで臨んでいる、と父はとらえていたようです。残念ですが、父の言う通りだと思いました。同時に、次こそ絶対に受かってやる!と、決意したのです。


何度も何度も添削してくれるアドバイザーの方に、感謝。

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2度目の試験に向けて、まずどんなことをしましたか。

すぐにキャリアセンターへ向かいました。愛知学院大学のキャリアセンターには、公務員専任のアドバイザーが在籍し、論文添削や面接の練習など、目指す公務員試験に合わせた対策をマンツーマンで行っているのです。その存在については何となく知っていましたが、1度目の試験の際は利用していませんでした。相談してまず指摘されたのが、消防官についての知識でした。

消防官の知識とは?

仕事の内容をどれだけ理解しているか、です。論文制作では、消防官に関する一つのテーマが課題として提示されます。例えば、「消防官に対して市民が期待していることとは?」など。業務について深い認識がなければ、まとめ上げることは困難です。だから、論文の技術向上は、消防官の知識を膨らませることと同時進行で進めていきました。

消防官についてより深く知ったことで、将来の夢に変化は生まれなかったのですか。

すでに消防官として活躍している先輩から話を聞くと、 人命を助けるだけでなく、 遺体とも向き合わなければいけないなど、 目を背けたくなる情報も耳にしました。 でも、 物理的にも、 精神的にも自分の身体を盾にして地域住民を守らないといけない現場であることを再認識し、 消防官になりたいという想いは、 一層強くなりました。 以前は、 見た目の格好良さばかりが志望動機を大きく占めていましたが、 今は業務そのものに対する憧れの方が大きいです。

アドバイザーのサポートは、論文制作の技術向上につながっていますか。

最初に論文を持っていった時、原稿用紙は添削の赤字で真っ赤になって戻ってきました。一瞬、愕然としましたが、何度も提出しました。そのうち、徐々に赤字が減ってきて、今では数行に修正を入れてもらっている程度です。これまで、数え切れないほどの論文を提出しましたが、常に、丁寧且つ厳しい目で添削してくれるので、本当に感謝しています。


幅広い学問領域を備える、総合政策学科。

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新谷さんは、論文だけじゃなく、普段の講義もしっかり取り組んでいると聞きました。

しっかり取り組めているかは、わかりませんが、あらゆる講義に対して、近い将来、消防官となることができた際に役立つと考えて積極的に向き合っています。特に、総合政策学科は、学問領域が幅広いので嬉しいですね。国際、政治・経済、環境、教育、心理、健康など、多様な学びをカバーしており、様々な知識やスキルを修得することができます。

消防官への夢が、様々な学びに対するモチベーションも上げてくれるのですね。

中でも、国際関係史などは興味深かったですね。一般常識として歴史を知っておくことは大切だと思って講義を受けていましたが、各国が体制を変えながら問題解決に取り組む様子には面白みを覚えました。その他、消防官になってからは事務作業でPCを用いる場面が多くあると聞いているので、WardやExcelなどの技術向上につながる講義などにもどんどん前向きに参加しました。

そもそも愛知学院大学・総合政策学部を選んだ理由を教えてください。

愛知学院大学との出会いをふり返ると、中学時代までさかのぼります。私は中学生の頃からバレーボールをしていて、選抜大会の会場が愛知学院大学だったのです。その敷地の広大さに、大変驚いた記憶があります。それから高校に入学し、進路選択の際に、あらためて愛知学院大学の名前に出会ったのです。

何か縁を感じますね。

そうですね。バレーボール部の仲の良いメンバーの出身が愛知県だったこともあり、私は本学への進学を決めました。総合政策学部を選んだ理由は、まだ確かな将来の夢が決まっていなかった当時の私にとって、幅広い学問と向き合える場所は、幅広い夢の選択肢があることと同意だったからです。

では、総合政策学部の学びについて概要を教えてください。

教育目標となっているのは、人と社会に関わる問題を多角的にとらえ、課題を発見・分析して解決を目指し、社会貢献できる能力を培うことです。そのために、ベースとなるリテラシーとして、まず、言語、情報、リサーチ、プランニングなどの基礎力を身に付けます。さらに、1年次から4年次までの必修科目「リサーチプロジェクト」(ゼミ)を通して、世の中の問題の現状把握、計画、実施、評価などを実践。問題解決力とコミュニケーション力を養っていきます。前述しましたが、幅広い学問領域を備えることも本学部の特長です。自分自身が興味を持てる分野を掘り下げて学ぶことができます。


卒論で取り組むのは、「伝える」という問題解決。

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ゼミでは、どんな内容を課題として取り上げているのですか。

私の所属するゼミでは「ITと広告」をテーマに掲げています。ターゲットとなる相手へどのような手法ならばメッセージが伝達できるか、どんな情報技術を用いればより集客が望めるか、などを学んでいます。「伝えること」は、地域と共に生きる公務員にとっては大切な問題です。秋学期より始まる卒論制作のために、今は資料を探しています。

講義やゼミ以外でも、消防官の仕事に役立つかどうかを意識していますね。

はい。部活では、ウエイトトレーニング部に所属していて、もっとストレートに消防官を意識しています。これも1度目の試験に落ちた頃、キャリアセンターに通い始めた時期と同様のタイミングで入部しました。器具を使える自由度が高いので、1次試験の体力試験対策はもちろん、消防官になってから必要となる体力作りのために通っています。部員として大会にも出場したこともありますが、もともと出場校が少なく、私を合わせて3人のエントリーで、私は3位という結果でした(笑)。

アルバイトは何をしているのですか。

スポーツジムの監視員です。それも1度目の試験後直後に始めました。ただ、最も大きな目的は身体を鍛えることではないのです。消防官の2次試験で面接を受けた時に、消防官についての知識の少なさと同時に、自分のコミュニケーション力の無さを強く感じ、その訓練だと思って働き始めました。スポーツジムにはジムとプールがあり、年齢層としては特に年配の方が多いので、使用法やルールなどをわかりやすく説明する必要があります。また、状況によっては雑談に近い対話も大切です。そこでスムーズにコミュニケーションを展開できるようになりたいと思っています。


あらゆることが、一つの目標に集約されていく。

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消防官にコミュニケーション力は必要なのですか。

もちろん必要です。例えば避難訓練で、消防官は多くの人に避難の方法を的確に伝えなければいけません。対象となる年齢層も様々です。老若男女、子どもからお年寄りまですべての人に明確に伝達できないといけません。実際に火災などが発生した際には、その重要度は、当然ですがさらに増すと考えます。スポーツジムのアルバイトで得られるものは大きいと思っています。

志しだいで、アルバイトの価値も変わりますね。素晴らしいです。

大学の講義にしても、部活にしても、アルバイトにしても、もっと気楽にやったほうが様々な楽しみが見えてくるとは思います。でも、今は、消防官になることしか僕には見えないのです。だから、消防官という夢を通して様々なことに積極的になれているのだと思います。

試験日はいつですか。

9月です。試験間近なので、最近は、つながりのある消防官の先輩たちに様々な相談をしています。実際に働いている人しか知り得ないことを聞いて、知識にさらに深みを持たせています。また、合格した後の行動についても考えています。合格したら、ひとまず大学卒業までに大型免許を取得しに行こうと思っています。働き出したらなかなか取得する時間が割けないと思いますから。

頑張ってください。では最後に高校生の皆さんにメッセージを。

愛知学院大学には、様々な出会いが溢れていると思います。「学び」の出会いについては、私は総合政策学部しか知りませんが、どの学部学科の講義も彩りに満ちている気がします。そして「人の出会い」については、これまた非常に幅広いです。北は北海道、南は沖縄。さらには海外からも数多くの学生や教員が愛知学院大学に集まってきているので、自分次第で多様な人と知りあうことができます。それらすべての出会いが自分を成長させてくれると思います。私のように一つの夢が決まっている人は、その夢につながる様々な出会いがあり、まだ夢を持っていない人はまだ見ぬ夢につながる出会いがあるのではないかと思います。大きな期待だけ抱いて、飛び込んではいかがでしょうか。


取材を終えて

撮影をしながら、新谷さんにご家族のことについて尋ねました。「お父さんも、ひょっとしたら消防官になりたかったのでは?」。その問いに返ってきたのは、「昔は誘われたこともあったけれど、やりたくなくて断ったそうです」というコメント。では、なぜ、新谷さんに消防官をすすめたのか。これは憶測ですが、一つの夢を目指すために多様なことに積極的になる新谷さんの性格が、消防官に向いていると思ったからではないでしょうか。消防官の現場は危険だからこそ、目の前の物事を見つめるだけでなく、広い視野を持って今何ができるかを常に考えなければいけないはずです。新谷さんは、消防官という夢を見つめることで、総合政策学部の多彩な学びが持つそれぞれの特徴を「消防官の仕事」の視点でとらえ、より積極的に取り組んでいます。2年越しの夢も、お父さんの想いも、ぜひ次の試験で叶えてほしいと思います。強く合格を願っています。今回は、貴重なお話をありがとうございました。

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