歯科医師として尊敬される父を見て育った。

折山 資(おりやま たすく)さん 歯学部 歯学科6年

歯科医師を目指したきっかけを教えてください。

父が歯科医師で、地域住民から感謝される姿を幼い頃から見続けてきました。小学校のときから、いつか父みたいな歯科医師になりたいと思うようになりました。

愛知学院大学の歯学部を選択した理由を教えて下さい。

まず、父が愛知学院大学歯学部出身ということ。そして、父が「施設や教授陣、その他、魅力的な学びが豊富にある大学だから、間違いない」と背中を押してくれたからです。また、オープンキャンパスに参加し、環境の良さを自分でも感じました。私は県外出身なのですが、名古屋の過ごしやすい地域性も気に入りました。

入学してみていかがでしたか?

ゆとりのある大学生活を予想していましたが、想像以上に中身の濃い日々を送っています。国家試験合格を目指すプロセスやカリキュラムが豊富に揃っているからだと思います。またカリキュラムは、どれも常に時代に沿った内容です。例えば、虫歯などで歯を喪失した場合、従来は入れ歯やブリッジでの治療が常識でしたが、今ではインプラントが一般的です。最新の技術や考え方を修得することができるので、新しい時代の歯科医師を目指している実感があります。


重要である人間的素養を、着実に構築できる。

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1年次の学びについて教えてください。

1年次は、日進キャンパスで一般教養を中心に学び、金曜日の1限のみ楠元キャンパスで歯学部の講義を受けました。心理学や、教育学、化学、生物、物理学、宗教学など、700を超える教養教育の中から歯科医師として求められる素養が修得できました。

※平成27年度カリキュラムより、金曜日は終日楠元キャンパスにて講義を行う予定です。

一般教養で、特に印象に残っている講義は何ですか?

心理学です。印象に残っているというよりも、すでに役に立っています。今(取材日・平成27年3月現在)、歯学部附属病院での臨床実習において、お年寄りや障がい者を含めた実際の患者さんと向き合い、気持ちを理解して治療を行い、人の心理を考えることが重要だと実感しています。

1年次、楠元キャンパスではどんな講義を受けたのでしょうか?

歯科学概論という講義で、様々な先生のお話を聴講しました。強く印象に残っているのは、モンゴルの未開拓の地へ治療に足を運んでいる先生の講話です。まだ歯科医療が発達していない土地で治療を施したり、口腔衛生指導を実施したりしているという内容でした。私も、大きな刺激と感銘を受けました。

他に、強く記憶に残っている講義はありますか?

口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)についての講義です。歯学部附属病院には、口唇口蓋裂センターがあり、最先端の知識や技術を学ぶことができます。口唇裂や口蓋裂とは先天性異常の一つで、胎生4~12週頃に何らかの異常が生じ、口唇や口の中の天井部分を指す口蓋、歯茎に割れ目が残ってしまったもののことです。この疾病は、様々な形で表れ、長い治療も求められるため家族の精神的不安や社会的不安が伴います。患者さんのケアだけでなく家族の心理的なケアも必要で、それを果たす使命が口腔医師にはあることをこの講義で学びました。


歯学の基礎を学ぶ。歯学の未来を想像する。

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2年次からは、学びの舞台が楠元キャンパスに移るそうですね。

はい。2年次は、楠元キャンパスで主に歯学の基礎を修得しました。ふり返って考えてみると、専門性を突き詰めていく3年次からの学びの基礎を重点に学ぶ重要なカリキュラムが多かったです。中でも「歯科理工学」は材料・機械・器具に関する知識のベースとなる内容で、興味が持てました。

「歯科理工学」とはどんな講義ですか?

歯科医療の一つの目的は、虫歯や歯周病などによって歯が欠損・喪失した場合に適した人工材料を用いて回復を図っていくことです。歯科理工学では、人の身体と適応・調和する人工材料の性質、使用法、器具の取り扱い法などについて学びます。最新の歯科医療に沿った講義内容なので、科学が好きな私としては、胸が躍りました。

胸が躍った内容についてお訊ねしたいです。

例えば、再生医療の話。再生医療は進歩を遂げており、将来、全身の再生まで期待されています。これは、歯科医療にもつながる話だと思います。もちろん現在では、欠損した部分などを歯科材料で補填(ほてん)することにとどまりますが、将来的に人体と同様のものを補える時代が来れば、歯科医療の新しい可能性が拓かれるのではないでしょうか。未来の歯科医療を想像すると、心が弾みます。

歯の本数など、実際の歯の仕組みについて学べる講義もあるのでしょうか?

あります。「歯の解剖学」と言う講義で、歯の本数や形状、部位の名称など人体の正常な構造を理解し、探究していきます。歯学の教育・研究に必須の知識を修得する基礎科目です。


人間理解力、技術力、時代対応力。全てが身につく環境。

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3年次からは専門性が高くなるそうですね。

はい。専門的な学びの一つとして「全部欠損補綴(ぜんぶけっそんほてつ)」の講義と実習があります。これは、全部の歯を失った無歯顎(むしがく)患者に装着する全部床義歯(ぜんぶしょうぎし)、つまり総入れ歯を作る上での必要な知識と製作方法を学びます。歯が全て抜けてしまうと、人は、単に食事や会話といった機能的な支障をきたすだけでなく、心理的にも大きな影響を受けます。機能面と心理面をいかに回復させていくかが重要なポイントとなるのです。

現代のニーズが反映されているように感じます。

高齢化社会において、無歯顎の患者さんは増え続けています。無歯顎の患者さんでなくとも、高齢患者に対して理解を持った歯科医療を行っていくことは今後ますます必要となっていきます。そこには、歯を残していく意味で、「保存修復学」も重要な役割を担うことになります。また、高齢者の視点で対話を行うために、心理学をベースにしたコミュニケーション力も必要です。一般教養で学んだ心理学が、ここでも活きてきます。

話を聞いていると、歯学とは、単なる歯の問題を治すだけではないように感じてきました。

私もそう考えています。歯学とは、単に歯に対峙する技術を学ぶだけではなく、人間理解のできる素養を身につけた上で、患者さんを、肉体的にも精神的にも健康な状態へ導く使命を担っているのだと思います。それらの包括的な学びを、時代のニーズに合わせて学修できる場所として、愛知学院大学歯学部は特に優れていると実感しています。


共用試験の突破へ。そして、人命に関わる仕事への想い。

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では、4年次の学びについて教えてください。

ここからは、「共用試験」の受験に向けて、勉強していく流れとなります。これは、「臨床実習開始前の学生評価のための共用試験システム」のことで、臨床実習開始前までに修得しておくべき必要不可欠な医学的知識を総合的に理解しているかどうかを客観的に確認する「CBT」(Computer-Based Testing)と「OSCE」(Objective Structured Clinical Examination)を指します。実施は4年次の1月で、両試験に合格しないと5年次の臨床課程には進級できません。

どういった試験なのか具体的に教えてください。

「CBT」は、筆記試験です。臨床実習に求められる知識について、コンピュータを用いて、いくつかの選択肢の中から正解を選んでいく多肢選択式問題などで構成されています。「OSCE」は、臨床能力を身につけているかどうか実技を通して確認します。問診に始まり、主訴の理解、治療、解決まで、実際の歯科医療の流れに沿います。特にチェックされるのは、患者さんが「何を最も煩わしく思っているか」「現在どういう薬を飲んでいるか」「どういう精神状態なのか」など最低限必要な情報を聞き出せているかです。これらを知らない限りは治療を進めていくためのプランが立てられないので、非常に大事なことです。

共用試験対策以外のカリキュラムについて教えてください。

4年次の中盤までは、共用試験対策と並行して専門科目を学びます。その中でも強く印象に残っているのが「口腔外科学」です。口腔外科は口腔およびその周辺にみられる外傷、炎症、腫瘍(良性・悪性)、嚢胞、奇形、神経性疾患などを扱う学問です。しかし、口腔外科の専門でなくても、“人の命”に関わるので歯科医師はその知識を持ち、判断ができないといけません。

どういった場合に人の命に関わるのでしょうか。

例えば、口内炎の患者さんがいたとします。腫れている状態を放っておくとリンパに定着してしまうことがあります。するとノドが腫れて、気道が圧迫され呼吸困難となり、死に至ることがあるのです。歯を診ていて、そういった状況を発見したら、すぐに病院へ行くことを促せる知識が必要です。以前、父が「今日、診断していて舌がんの疑いがある患者さんがいたから、すぐに総合病院へ送ったんだ」と言っていたことがあります。その時、歯科医とは命に関わる仕事なのだと切実に思いました。


附属病院での実習で、知識と臨床の違いを知る。

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5年次からはいよいよ臨床実習ですね。

臨床実習が始まるのは秋学期からです。春学期は、内科、外科、耳鼻科、皮膚科、産婦人科など、医学の領域について総合的に学んでいきます。例えば、歯を診断していて内科の先生に相談する必要が生じた場合、内科の知識があれば、より深い対話ができます。

なるほど。知識の基盤を確かなものとして、秋学期の実習に臨むわけですね。

そうです。秋学期からは、末盛キャンパス(歯学部附属病院)において臨床実習に参加します。実際の医療現場で、先生と共に、患者さんと触れあいながら今まで身につけてきた知識を確認していきます。私はまず、知識と臨床とは大きく異なることを実感しました。知識としての治療は手順が決まっていますが、状況がどんどん変化していく実際の現場では、臨機応変に対応していくことが求められるのです。また、愛知学院大学歯学部では、学生が主体的に診療に参加するアメリカ型の診療参加型実習(クリニカルクラークシップ)を採用しています。ひとり一人の患者さんに向き合い、それぞれの個性に合った治療を行うことで、心から患者さんの視点に立てる歯科医師を育んでいるのです。

そして、今、6年次に突入しているのですね。

はい。春学期は引き続き臨床実習に参加し、秋学期は国家試験対策に専念していくことになります。愛知学院大学には、歯学・薬学図書館情報センターなど、国家試験の勉強に適した環境もあるので、活用して集中力を高めながら頑張りたいです。早く、歯科医師となって多くの患者さんを支えていきたいですね。

最後に高校生にメッセージを。

歯科医師とは、単に歯を診て、削ってきれいにしているだけではありません。人の命に関わる医療の一つとして、今後の高齢者社会においてさらにその必要性は増していくと考えます。私自身、今後の社会に求められる職業としての自覚と誇りをもって、歯科医師として1人の人間として成長して行きたいと思っています。


取材を終えて

折山さんはとにかく話が上手な方です。こちらが求めていることを、先回りしてくみ取り、本質を捉えて話してくれる。また、長い内容でも、整えられた構成でまとめてから伝えてくれるので、非常にわかりやすい。たとえて言えば、頭の中で、情報がキレイにフォルダに分けられていて、相手が求める必要な情報を察知しながらスムーズに取り出している感じがします。将来、歯科医師になって患者さんとコミュニケーションを行う際、大事なことを自然に聞き出し、無理なく最適な対応を施していくようになるのだろうと想像せずにはいられませんでした。6年次の勉強、そして国家試験、頑張って下さい。折山さんならきっとお父さんと同じように、地域住民から尊敬される歯科医師になれるのではないでしょうか。今回は、貴重なお話をありがとうございました。

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