日本文化学科を選んだ理由

瀬脇 千夏(せわき ちなつ)さん 文学部 日本文化学科3年生

日本文化学科を選んだ理由を教えてください。

そもそも、私は自分に様々なコンプレックスがあって、何事にも自信が持てないでいました。人見知りも強く、何か目標があったわけではありません。そんなときに先生が「日本の文化を学んで、自分が生活をしていることを理解していったなら、もう少し自分のことを好きになれるのでは?」とアドバイスをしてくれました。そのことがきっかけとなり、日本文化学科に興味を持つようになりました。

もともと日本文化には興味があったのですか?

文化って言葉自体の解釈が難しく、はっきりと理解はできていなかったと思います。ただ、私は国語が得意で特に小説を読むのが好きでした。

そのことを知っていて先生はアドバイスしてくれたのですね。

それはどうかはわかりませんが、今、振り返れば、なんとか私の良い所を見つけて、自信が持てるきっかけをつくりたかったのだと感じています。

小説はどんな作品が好きなのですか?

石田衣良さんが好きです。あと少し怖いですが、乙一さんも好きです。

特に好きな著書はありますか?

石田さんの著書なら「4TEEN」。登場人物の男の子が14歳と当時、読んでいた頃の私と同世代で「わかる、わかる」と共感できる所が多かったです。乙一さんの場合は「夏と花火と私の死体」。死体目線という本来であれば、ありえない視点からのストーリー展開がおもしろかったです。

小説好きから日本文化に興味を持つ。その流れはありそうですね。

実際、日本文化学科には、読書が好きな学生が多いです。「文化」というと難しく感じるかもしれませんが、小説や読書など日本語に興味がある人は進路先として考えて良い学科だと思います。


身近な現代語を客観的に観察

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日本文化学科では、どんな学習をすると思っていましたか?

当初は、古典の授業ばかりするのかなと思っていました。日本の文化と聞くと、古い書物をイメージしませんか?あと、伝統とか歴史とか。私はどちらかというと古典より現代文が好きでしたので、正直、不安がありました。

入学当初はどんな学習から始まったのでしょうか?

日本語、特に現代語からスタートしました。アクセントやイントーネーションの違いなど、日本語の形態、音声、意味、文法を、改めて客観的に観察することで、今までには感じ取れなかった、日本語、言葉の面白さに気がつくことができました。

もう少し詳しく教えてください。

例えば、日本語のアクセントを考えてみます。アクセントは1音目が上がると、2音目が下がる。逆に最初が高ければ、2音目が低い。そして、一度上がったアクセントは二度と上がらないという規則性があります。

なんだか面白そう。

そうなんです。普段、何気なく使っている日本語や言葉ですが、様々な視点で、客観的に掘り下げていくと、いろんな発見があります。この授業では、日本語って面白い、奥深いと感じることができました。

日頃、使っている言葉からスタートできたのは良かったですね。

最初に難しい、古典語などから始まっていたら、挫折していたかもしれません。大学の授業って楽しいなと感じ取れたのも、この授業からスタートできたからだと思います。


物語に入り込み背景を読み解く古典の学び

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2年生ではどんなことを学んだのでしょうか?

全体的には1年次よりステップアップしていく感じです。古典文学への取り組みも2年次に始まりました。

古典の授業ではどんなことが印象に残っていますか?

ひと言で表現すると、楽しかったです。というのは、中学・高校の時の古典とは全く違った授業だったからです。

詳しく教えてください。

高校までの古典の授業は、文法中心です。それを覚えるのが一苦労でした。それに対して大学での授業では、登場人物の心情を考えたり、しぐさや行動からその人物像を推測してみたりと全く違う展開でした。

確かに文法を覚えるのが大変だった記憶があります。

何よりもそれまでの学びと違うと感じたのは、物語の中に自分たちが入っていく感じがしました。まるで自分たちがその時代に存在しているかのように、物語のワンシーンにかかわっているようで、その時代を立体的にとらえることができました。

古典を学ぶと言っても高校の時までとは、まるで違いますね。

例えば、『源氏物語絵巻』の塗り絵からスタートし、平安朝の衣装の色を再現してみたり、室内の調度品や庭の草花はどのような配色など考えてみたりするなど、そのような授業って全く高校生の時には経験できないですよね?「平安時代のオシャレってどんな感じ?」そう考えるだけでも楽しいと思います。

話を聞いていると楽しさが伝わってきます。

それぞれの時代に、人が生きていて、今とは違った彩りがあります。この学びを通じて、心が豊かになっていく感じがしましたね。

その他に印象に残っている授業はありましたか?

民俗学の授業も楽しかったです。衣食住、冠婚葬祭、年中行事、食べ物や都市伝説まで幅広い話題で展開し、伝承されてきたものを通じて現在の生活文化を理解していくものです。特に印象に残っているのは東北地方のイタコ(※)の話です。イタコの口寄せは今もなお続いていて、同じ日本でもまだまだ知らないことが多くあるのだと再認識できました。

イタコ(※)・・東北地方で口寄せ(神仙や死者・行方不明者の霊などを乗り移らせてその言葉を語る)巫女のこと

参照記事
会いたい、聞きたい イタコ訪れる被災者たち(朝日新聞)

いろんなことを学びますね。

この多様な学びこそが愛知学院大学の特長の1つです。物事を幅広い視点で捉えることができるというのは大事なことです。学びを通じてその経験ができることを嬉しく思っています。


「文化探求現場主義」を実現する4つの領域

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3年生からはゼミですか?

はい。日本文化学科には「文化探求現場主義」を実現するために、「言語」「文学」「思想と芸術」「社会と民俗」と4つの領域があります。ゼミではその中から専門領域を掘り下げていく形です。

「文化探求現場主義」と4つの領域について説明してください。

「文化探求現場主義」というのは、 教室の中で文献や書物だけに触れているのではなく、現場に出て、文化を肌で感じようというものです。4つの領域については、「言語」領域では日本語を中心に幅広い視点からことばを見つめ直します。 「文学」領域では『古事記』や『源氏物語』などの古典文学から夏目漱石などの近代文学にも目を向け広い視点で日本文学を学びます。 「思想と芸術」領域では、 思想と芸術に関する分野を幅広く学び、 博物館・寺社に出かけたり、 書道での創作を通じて芸術を捉えたりします。 「社会と民俗」の領域では社会学と民俗学を主軸とし、土地の人々と触れ合い聞き取りや観察によるフィールドワークから貴重な情報を得てきます。

瀬脇さんはどの領域を選択したのですか?

「言語」領域です。先に話をした1年次での言語に授業が非常に興味を持ったので、その学びをさらに深めるために選択しました。

ゼミは何名くらいで運営されるのですか?

10数名です。少人数でみんながそれぞれテーマを決めて発表していきます。私は言葉のイントネーションやアクセントをテーマにしていますが、他には、こそあど言葉や、半クエスチョン(半疑問)についてなど、あらゆるテーマで研究しています。

卒論のテーマは決めましたか?

もうそろそろ決めないといけないと思いますが、4年次にまた学習が深くなると思うので、その時に決定したいと思います。


東日本大震災のボランティア活動へ参加

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大学生活の中で他に印象に残っていることはありますか?

ボランティア活動です。みなさんご存知のように、昨年3月に東日本大震災がありました。8月に学生課でボランティアの募集がありましたので、私も参加させてもらいました。

そのボランティアには何名ぐらい参加されたのですか?

3班に分かれて時期をずらして参加しました。1班20名程の参加ですから、トータルで60名程です。

ボランティアには前から参加しようと思っていたのですか?

はい。今回の震災が起きた直後からボランティアに行きたいと思っていました。こんな私でも何か力になれないかと・・。今回の募集以前より大学に「ボランティアに参加する方法はないのでしょうか?」と要望していました。この8月に実現できて良かったと思います。

どのような手段で現地に入られたのでしょうか?

バスで13時間かけて行きました。21時に出発して翌日の11時に到着しました。

初日はどのような行動を?

まずは、津波があった所をバスで見に行きました。

その光景を観てどう感じましたか?

その時に観た光景はテレビでも流れていました。ただテレビでは、現実味がなかったというか・・。正直、あのような風景は生まれて観たことがないのですから、どこかで信じられないでいました。今回、実際にその現場を目の当たりにして「やはり震災は起こった、これは現実なんだ」と改めて感じましたね。

その後は、どんな活動をしたのでしょう?

活動は朝8時~16時。移動を除いて3日間の活動でした。その間、NPO愛知ネットさんと共に行動させてもらいました。まずは仮設住宅をまわって、そこに住んでいる人の話を聞かせてもらいました。

どのような話を聞かれましたか?

つらい話が多かったです。「津波が起こった時、後ろを振り返らず、必死で逃げた」「親戚がまだ見つかっていない。葬式をするかどうか考えている」など、積極的に話をしてくれました。聞いている私たちは、最初、言葉もでません。ただただ、話を聴くのが精一杯でした。逆に話をしてくださる皆さんが、笑顔で話をしてくれたのが印象的でしたね。


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笑顔で・・ですか?

はい。私たちのことを気遣ってくださったのだと思います。あんなにひどい災害に遭われて、現実は自分のことで精一杯だと思うのですが、人としての優しさ、心遣いを感じました。「ありがとう」って何度も言われ、こちらが恐縮するほどでした。

心に残る話ですね。

私が逆の立場なら、相手に「ありがとう」って言えたかなと思います。それぐらい苦しい時期でしょう?何か役に立てたのかどうか・・ただ、NPOの方には「相手の話を聴くことも大事なことなんだよ」と言われて、少しはホッとしています。私たちに話をすることで少しでも気が安まっていただけたなら幸いです。

他にはどんな活動をしましたか?

草刈りもしました。この時も「暑いのに本当にありがとう」とお礼の言葉をいただきました。他には仮設住宅に皆さんの集まる場所があるのですが、そこでお茶を入れたり、話に参加させてもらったり。小学生と一緒に体育をやったり、全国の皆さんから送られてきた本を学年別に分けたりと、とにかくできる限りのことをやりました。

きっと瀬脇さんの気持ちは伝わっていると思いますよ。

そうだと嬉しいですけどね。今回の地震と津波で、見渡す限り何もない。がれきも積まれているだけの状態です。そんな中、私たちがやったことって微々たることです。ただ、それら自体は小さなことですが、こういう小さな積み重ねと、いっときではなく、これからの継続的な行動が大事なんだと思います。


新たに見えた将来の選択肢

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貴重な経験をしましたね。

家に戻ってきて家族のみんなにもそう言ってもらえました。役に立てるって幸せなことですね。改めてそう感じました。

大学内でもボランティア活動の報告会があったとか?

はい。3班に分かれていったので、それぞれの活動内容の報告とこの活動を通じて感じたことを発表しました。この報告会を通じて改めてこのような機会を持てて良かったと思いました。愛知学院大学にも感謝です。
※ 報告会の様子はこちらをご参照ください

将来はどのように考えていますか?

2年次より教職課程をとっていますので、高校で国語の先生になれたらいいなと思っています。ただ、今回のボランティア活動からNPOのような所で、働くことも意義深いことだと感じています。どちらにしても大切な将来のことですから、しっかりと自分と向き合い、私は何をするのが良いのか、考えたいと思います。

充実した大学生活ですね。

はい。最初はいろんな不安もありましたが、今は本当にこの大学へ来て良かったと思っています。友達もできましたし、今回のボランティア活動で知り合えた仲間もいました。

最後に高校生にひと言お願いします。

「日本文化」って難しそう。高校生のみなさんはそう感じるかもしれません。私も最初は、そう思っていました。でも難しくありません。地域のお祭りや、春だったらお花見、秋だったら紅葉を楽しむなど、四季折々を楽しむこと、それも文化です。文化は私たちの身近な所にあります。愛知学院大学の学びは幅広く、多様な視点が身につきます。学生も多く、いろんな価値観に出合え、気づきが多い環境です。是非、愛知学院大学へ足を運んでください。


取材を終えて

「何をやって良いのかわからない」「自信が持てない」。そう悩む人は少なくありません。ただ、人には自分では気づかないことが多くあります。「小説を読むのが好き」「国語が得意」「日本文化を学ぶと自信が持てるのでは?」と気づかせてくれた高校の先生。きっかけは小さいながらも愛知学院大学で瀬脇さんは多くの経験を通じて、新しい自分に出合ってきました。人見知りであった彼女が、自らボランティアを志願していく様子はまさにその証であるように思います。また、文化を通じて日本という国を考えたからこそ、生まれた行動だったのではないでしょうか?取材最後に見せてくれた笑顔が印象的でした。寒い中の撮影&取材。ありがとうございました。

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