自然と芽生えた薬への興味

東山 拓史(ひがしやま ひろふみ)さん 薬学部 医療薬学科 2年

薬学部に進学したきっかけを教えてください

一つは、薬そのものへの興味です。特にドーピングに興味があり、小さな薬の影響の大きさに驚きを感じていました。ドーピングは、オリンピックの時は常に話題になりますし、最近(取材日:2012年9月)では、ツール・ド・フランスで7連覇した選手が、タイトルを剥奪されるなど、象徴的な出来事もありましたね。ドーピングは、薬が人間に与える影響を考えていく上で、欠かせないテーマだと感じていました。

薬への興味は確かにありますね。

ドーピングというのは刺激的なテーマですが、薬が作用し、身体が変化していくわけですから、考えてみれば不思議ですよね。またこれは僕に限っての話ですが、幼少の頃から病院と薬は身近なもので、その影響も薬学部に進学をしたきっかけになっていると思います。

病院と薬が身近な環境だったとは、どういう意味ですか?

先天性の病気で、生まれた時に、耳が形をなしてえてなかったのです。この耳も自分の骨でつくったもので、入院生活と通院が長かった影響もあり、薬は身近な存在でした。

全然、気がつきませんでした。

手術治療や薬が近年では大きく進歩していて、耳の形も聴覚も改善できます。みなさんの声も聴こえていますし、こうやって取材にも応じることができるぐらいですから、今では随分と良い状態です。

その時に、薬が身近だったということですか。

はい、そうです。その際、処方箋(しょうほうせん)を読むのが好きで、自分が飲んでいる薬の目的など確認していました。あと、調剤室を眺めているのも好きでした。薬剤師さんがカッコ良く、魅力的に感じました。

薬学部を選択したことは、その影響があるかもしれませんね。

確かに、気づいたら、薬学部を選択していました。薬が身近であったこと、その際に見た薬剤師の影響があったのだと思います。


愛知学院大学 薬学部の魅力

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愛知学院大学に惹かれた理由は何でしょうか?

まず、薬学部が愛知学院大学のなかでも新しい学部だということです。建物も新しく、最新の設備も充実していて、そこで学ぶことができる期待がありました。ただ新しいだけではなく、愛知学院大学自体は、歴史がある歯学部も併設していて、しっかりとした実績があり、薬学を修得するのに最適な環境だと考えたからです。

新しさと歴史を兼ね備えているということですね?

そうです。その魅力は入学してから、さらに実感しています。歯学部だけではなく、歴史がある心理学科を代表とする心身科学部の存在や、附属病院との連携もとれていて、実務実習、臨床実習などに恵まれた環境も実感しています。

主体的に学ぶ姿勢を身につける1年目

1年次は、どんなことを学ぶのですか?

日進キャンパスで主に一般教養を学びます。近年、多様化・複雑化する社会に対応できるよう、リベラルアーツ教育の重要性が叫ばれていますが、愛知学院大学は全国でも数少ない「教養部」を設置し、その取り組みを強化しています。

基礎を学ぶ感じですか?

教養部には700科目を超える講義があり、興味に応じて選択できます。多岐にわたるカリキュラムは、基礎的な学習能力と広い視野の育成だけではなく、それぞれの学科で専門性を深めていくための土台づくりにもなります。

主にどんな科目を選択しましたか?

中国語やフランス語などの語学。  その他には地理や社会学、 政治学を選択しました。

教養部で学んだことは何でしょうか?

ひと言でいえば「主体的に学ぶ姿勢」を教わったと感じています。単に暗記するということではなく、1つの物事に対して、どのように考えるのか?自分はどう思うのか?学ぶことに対して、受け身ではない、その姿勢です。

それは専門科目を学ぶ上でも必要なことですね。

はい。薬学部の場合、2年次からは覚えなければいけないことが増えてきますが、ただ暗記するだけでは、だめだと思うんです。そういった意味では「考える」ことを1年次に身につけてこそ、その後の専門領域も活かされます。


レベルに応じた柔軟なカリキュラム

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1年次にも専門科目は、あるのですか?

はい、あります。生命の尊さ、薬剤師の責務や社会的役割、倫理観などを学び、医療人としてふさわしい意識を育てるための講義があります。具体的には、例えば「世界アルツハイマーデー」(9月21日)のように、医療テーマの記念日に合わせ、講演してもらいレポートを提出する講義もありますし、化学や物理や生物の基礎を学ぶことも多いです。2年次以降、専門科目の本格的な学びに対応できるよう、薬学の基本を身につけます。

薬学部というと完全に理系というイメージがあります。

そうですね。もちろん理系教科は必要なのですが、愛知学院大学の薬学部には、文系出身者もいます。この大学には苦手な教科や足りない基礎知識を補い、理解できるようにカリキュラムも準備されているので安心ですね。

それはいいですね。

ほんと、充実していますよね。選択肢が多いだけではなく、個人に適したカリキュラムがあるのも、愛知学院大学の良さだと思いますよ。

薬学部は実習も充実していると聞いています。

はい。 1年次より、 物理、 化学、 生物と全ての実習があります。 1台何百万もする高性能な電子顕微鏡など、 惜しげも無く、 使わせてもらっていることに感謝しています。

その顕微鏡では、どういう風に見えるのですか?

接眼部分はとても小さいのに、のぞいてみると世界が広いというか、細部まで観察することができます。あのような視覚は、今までには経験したことがなかったので驚いています。

貴重な経験ですね。他にはどのような実習がありましたか?

化学では主に器具の扱い方や予習、提出物の期限など、講義に対する心構えを学ばせてもらったと感じています。生物は、蛙の解剖や、めだかの尾ひれの血流を観察したり、ウニの卵割を記録に残したりと、実験というより観察し、理解する印象が強かったです。

苦手な教科はなかったですか?

理系出身だからかもしれませんが、生物は少し苦手に感じました。でも「何が苦手か?」と認識することも大事ですよね。苦手なことを理解して、取り組んだなら全く問題ないですから。そういったカリキュラムが用意されているので、あとは自分次第です。


専門度が増し、自ら思考する機会が増える2年目

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それらの講義や実習は2年次にはどうなっていくのですか?

薬学の専門化が深まるのですが、例えば1年次に身につけた、物理化学的な知識や化学的実験のスキルを、さらに実習を積んで高めていくイメージです。実験も週に1回以上はあり、その取り組み方が違ってきます。

どのように取り組み方が違ってくるのでしょうか?

もっと自由度が高くなります。1年次は、みんなが同じやり方で足並みを揃えて実験していきますが、2年次からは特に結果が重要で、やり方はテキストにも詳しく書かれていないので、自分で考えて実験していく流れになります。

難しそう。

いや、それが逆に楽しいのです。テキスト通りに実験したならば、結果がある程度は予測がつきます。しかし、そこに自分の考えを織り交ぜることによって、「どうして違う結果が出たのか?」「やり方が違うのにどうして同じ結果になったのか?」と考えることが楽しいです。

考えるプロセスが楽しいということですか?

はい。そこで生まれる偶然の出合いも楽しいのです。例えば僕は、ツーリングが好きなのですが、たまたま目に入った変わった店に入ってみたりとか、そこで世間話をして時間が過ぎたりとか、目的地に行くまでの過程を楽しんでいます。目的地までどれだけ早く行けるのか?それも良いと思いますが、道中で何気な風景に触れたり、予定にはないことがあったり、そのことがツーリングの醍醐味でもあります。

興味深い話です。

結果は大事なのですが、その過程が楽しいのです。実験であれば考えていくプロセスが楽しい。結果が出た後も、なぜだろう?と考えるのが楽しい。たとえ、その結果が想定したものでなくても、そして正解でなかったとしても、その過程を楽しめる、それが 学びの素晴らしさだと思っています。

「過程が楽しめる」。素敵な話です。

学生には失敗できる権利があると思います。だから、自分のアイデアを頭の中に入れておくだけでは、もったいない、どんどん出して磨きをかけたいです。仮に間違ったとしても、学生なので先生が指導してくれます。だから思い切って、自分の考えていることを試していけば良いのです。

「失敗は学生の権利」。いい言葉ですね。

失敗が許される環境、それ自体が素晴らしいですよね。何もしなくて後悔だけはしたくないですし、やらずに判断しないことが大事だと思います。「1回ダメでも、2回はやってみよう」と、いつもその気持ちを持つことが大事なのではないでしょうか。


喜びを分かち合える環境

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実際に失敗したと思ったことはありますか?

春学期の実習で失敗をしました。フラスコの中で、ある物質を再結晶する実験で、フラスコを倒してしまい、その中にお湯が入ってしまったのです。そういう場合は再結晶できないので、先生にも「それは捨てなさい」と言われたのですが、結晶となる物質はまだあるはずなのだから、どうしても結晶をつくりたいと思ったのです。

それでどうしたのですか?

自然冷却して結晶をつくる実験だったのですが、僕は無理やり水で冷やしたのです。そうしたら結晶ができたのです。

素晴らしい

その結晶を先生に見せたら「そういうのが楽しいよね」と言ってくれました。その言葉はとても嬉しかった。本来とは違ったプロセスでも、あきらめずに考えたことを一緒に喜んでくれた先生がいる。そのことが、結晶ができた喜び以上に、嬉しかったのです。

聞いているこちらまで嬉しくなってしまいます。

一緒に喜び合える環境って良いですよね。目的意識の高い仲間の存在も大きい。本当に薬学部は素晴らしいですよ。先生や仲間との素晴らしさだけでなく、設備面でも。僕たちが学んでいる校舎も最近つくられたばかりですし、図書館には10秒もあれば行けます。だからこそ、その環境を活かせるよう受け身ではなく自らが学ぶ姿勢を持ち続けたいと思います。


今後も楽しみな薬学部での学び

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図書館は良く活用するのですか?

はい。今日も取材前に科学情報誌を読んでいました。宇宙のことなど考えるのが好きですね。また、製品を見て、どうしたらもっと良い商品になるのか、服のデザインを見て、もっと売れるにはこうしたら良いなど、様々なことを考えるのが好きです。そして、自分の考えを出して相手の反応をみる。それも楽しいんですよね。

好奇心旺盛ですね。

そうですね。どの分野にも好奇心のアンテナが立っている感じです。あれこれと考えることができる。それが幸せです。

充実した6年間になりそうです。

はい。6年間ありますから、できることは多くあります。もっと語学もやりたいです。語学と言っても、英語とか仏語とかではなく、僕自身、耳で先天性の病気になったこともあり、手話を修得したいです。医療関係者で手話ができたなら、耳が聴こえず不自由している患者さんの役に立てると思うからです。

確かに薬剤師で手話ができる人は、あまり見かけませんね。

処方箋が出ているので、それで十分な説明になっているかもしれませんが、中にはもっと詳しく聞きたいなど感じている患者さんもいると思います。そういった方々の役に立ちたいです。

いい目標です。

あとは、専門知識もさらに身につけたいですし、現場にも出たいです。実習も重ねたいですし、臨床実習も楽しみです。ドーピングの研究も深めたいですし、5~6年次の研究室もどこになるのだろうと期待が強いです。やりたいことは絞りきれません。何事もチャレンジしていきたいと思います。

将来は、やはり薬剤師ですか?

それも選択肢の1つですし、公務員の道もあります。今は将来を限定せず、吸収できるものを全て吸収したいです。もし薬剤師の道に進むなら、子供の頃に見て憧れた薬剤師になりたいですし、また薬剤師になれたなら、その僕の姿を子供が見て憧れるような存在になりたいです。

最後に高校生、受験生へひと言、お願いします。

今は目の前のことに精一杯かもしれません。でも、遠い未来を見て欲しいです。未来に自分を置いて、今を考えてみて欲しいのです。そうすると、今、つらいことも、たいしたこともないと思えるかもしれないし、全く関係のない事柄が大事に思えたりしますし、心の余裕も生まれてくると思うのです。未来には幸せな自分がいます。だから安心して今を歩んで欲しいです。


取材を終えて

今回の取材は不思議な感じがしました。それは、大学生というより、社会を経験した大人と話をしているように感じたからです。質問に対しても、言葉一つひとつが明確で、はっきりとした意思が伝わってきました。そして、好奇心旺盛で、偶然の出合いを大事にし、そのプロセスを楽しむ、その大切さを理解していました。とても心が豊かに思えました。その豊かさを育む一役に愛知学院大学がある、そう思えました。取材中、終始、笑顔だった東山君。その笑顔は、私たちへの気遣いだったのだと感じています。数年後にまた会って話を聞いてみたいです。本当にありがとうございました。今後を楽しみにしています。

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