Club Interview vol.002 茶華道部 樋口 祐一(ひぐち ゆういち)さん 心身科学部心理学科3年生

創部56年の伝統がある茶華道部。流派は茶道が表千家。華道が小原流。代々の諸先輩の意志を受け継ぎ稽古を通して「和の心」を学ぶ。年に数回開催されるお茶会では自らお茶を振る舞い、お客様との交流をはかる。「お茶を召された後のお客様の笑顔が嬉しい」。一人でも多くの方にお茶の楽しみを提供できるよう部員一丸となって稽古に励む。 茶華道を通じて「和の心」を育む

01 創部56年の伝統を受け継ぐ

茶華道部について教えてください。

部員は約50名います。1年生、2年生がそれぞれ約20名ずつと3年生で構成され、男女比は、ほぼ半分、女性が少しだけ多いです。今年で創部56年。茶道の流派は表千家。3年次からの華道の流派は小原流です。

創部56年とは凄いですね。

諸先輩方の指導のもと、代々、意思を受け継ぎ、今日の活動につながっています。

活動内容を教えてください。

1年間のスケジュールは4月に新入生勧誘があり、6月には新入生披露茶会があります。その茶会では入部して2ヶ月の新入生が学生や先生、教職員のみなさんにお茶を振る舞います。今年も150名のお客様にお越しいただけました。9月に夏合宿を実施し、10月の徳川茶会、11月の学祭茶会など、おもに茶会に向けて、日頃、稽古に努めています。

稽古は毎週何回ほどしているのですか?

基本、水曜日と金曜日の週2日です。13:30-18:00まで行なっています。茶会が近づくと火曜日も活動します。主に礼儀作法、手前(※)、道具のそろえなど茶の湯の形とふるまいを稽古します。

(※)手前(てまえ)・・・お客様の前で、手順に従って茶をたてる所作、あるいは炉・風炉に炭をつぐ所作をいう。手前は長い歴史のなかで工夫、洗練されて、今日に至っている。

02 稽古を通して見習う

みなさんはどういったきっかけで茶華道部に入部されるのでしょうか?

やはり「和の心」を知りたいと思って入部してくる人が多いです。また茶道を通じて、礼儀作法や心を磨くことで、社会に出てからもそれを活かしたいと具体的な目標を持って入部する人もいます。私は高校生の時は弓道部だったのですが、その頃から茶道にも興味を持っていました。以前、剣道をやっていた部員もいます。

なるほど。他に共通点はありますか?

部員に共通するのは、ほとんどが茶道の未経験者だということです。つまり、経験の有無に関わることなく、興味を持った誰もが参加できます。そういった意味では、茶道は和の心や日本文化に気軽に触れることができる機会だと言えますね。

ただそんな簡単なものではないでしょう?

はい。そのために私たちは、稽古をするわけです。稽古とはその文字のとおり、古(いにしえ)を稽(かんが)える、の意です。茶の世界には600年の歴史があります。私たちはそれらを、稽古を通して見習うことで茶道の心を学ぶことができます。さらには反復して稽古することで、身体と心を整え、礼節ある人格をつくっていけると感じています。

話を聞いていると身が引き締まってきます。

礼節を重んじますから、上下関係は厳しいです。稽古している年数や指導する側、される側の師弟関係も明確に上下関係となって表れます。道具の扱いに関しては特に厳しいものです。新入生が僕たちの道具の扱いをみたら「なぜ、こんなに丁寧に扱っているのだろう?」と思うくらい神経を使っています。茶の世界では当たり前のことですが、例えば、道具の空中での手渡しはダメ。必ず下において相手に渡します。また、お湯をひしゃくですくった際も1回すくったら戻さない。お湯は必ず使いきるなど、言い訳はできない世界です。これらのことを口で伝えるだけでは、うまく伝わらないので、言い方に気をつけ手本を示して教えるようにしています。

奥が深いです。

茶道は日本独自のものです。600年という伝統もありますが、古いものが、ただ受け継がれてきただけではなく、その時代に即して新しいものを創造し現在に至っています。また、先程、道具の話を出しましたが茶器も茶道を構成する上で大事な要素です。作法それぞれに歴史背景と意義があり、私たちはその心を、稽古を通じて学び成長していっているのです。

 

 

03 お茶会は、お客様との心の交流

茶道の楽しい所は何でしょうか?

「茶を振る舞うことでお客様に喜んでもらえること」にあると思います。 そこには、お客様とお茶を点てる人との心の交流があります。 私たちのお茶でお客様が笑顔になるのなら、こんな幸せなことはありません。

その場が茶会なのですね?

はい。どのお茶会も日頃の稽古の成果を発揮できる場です。今年も7月のオープンキャンパスで、高校生や保護者の方にもお茶を振る舞わせて頂いたのですが、1日に2度お越しいただけたり、2日間ともご参加いただけたりと、本当に喜んでもらえました。100名以上も来ていただけたので、僕たちも嬉しかったです。

準備も大変ですね。

そうですね。前日は「道具や配置をどうしようか?」と部員で話をしたり、天気が良ければ外で茶会を開催しようと考えてみたり、その際は、みなさんに注目してもらえるよう会場をしつらえるなど、様々なことを考えます。また天候や開催場所によって「道具をどうするのか」「お菓子をどうするのか「飾るお花を変える」などの工夫も必要です。もちろん、お点前をする人、お客様と会話を交わす人など役割も決めます。大変ですが、部員みんなでそれらを考えるのも楽しいですね。

学内以外でのお茶会もあるのですか?

はい。他大学さんにお招きを預かることもあります。その際は、流派など違ったりすることもありますが、茶道は互いの作法に理解があり、自分たちが学んだ作法でお茶を楽しみます。また9月には愛知県みよし市にある文化センターサンアートさんをお借りして合宿をしました。今までには見たことのない茶器を鑑賞するなど、いつもとは違う環境にみんな新鮮さを感じてくれているようでした。

着物も素敵ですね。

今年から着物の着付けも指導いただいています。着物はきつく縛って着るのもあり、身も心もさらに引き締まります。まだまだ、慣れていないのと動きにくさがあり、現在は月2回の練習をしています。お茶会でも着物を着たいですし、他大学のお茶会にも出向きたいですね。また、来年から正式な練習プログラムとできるよう、57代目には継承していきたいと思います。

最後にメッセージを。

わたしたちのお茶会に是非、足をお運びください。 みなさんに喜んでいただけることが私たちの喜びです。 そして「 和の心 」に興味がありましたら、茶華道部へ。 私たちと一緒になって心を磨いていきましょう。

取材を終えて

廊下に並んだ数々の茶器。彩られた和菓子。一輪の花。茶釜の湯。着物。無駄のない所作。そこには、普段触れることのできない、凛とした空気が心地よく流れていました。「茶華道を通じて和の心を理解する。そのために稽古で先輩を見習い、稽古を反復することでそれを学ぶ」。56代目部長の樋口君はやさしい口調で、丁寧に私たちにその大切さを教えてくれました。緊張の空気の中に、時折、流れる笑顔と会話も印象的でした。彼らが振る舞うお茶を楽しみに。次はお茶会で再会ができたら嬉しいです。