Club Interview vol.012 写真部 渋谷 顕央(しぶたに あきひろ)さん 文学部国際文化学科

部員数37名。その多くが未経験者。部室内には暗室も設置され、モノクロ写真の作成も可能。年に3度行われる展示会には、毎回、大勢の来場者が訪れる。 もうひとつの「目」が、新しい世界を見せてくれる。

01 主な舞台は、年3回の展示会。

写真部について教えてください。

現在、部員は37名です。1年生6名、2年生8名、3年生16名、4年生7名です。男女構成は、ほぼ半々。多くのメンバーが未経験者からスタートしています。今年の1年生の中には撮り鉄(鉄道写真の撮影をメインに楽しむ鉄道ファン)もいたりと、中には熟練者もいますが、ほとんどは「格好良い写真が撮ってみたい」という、どちらかといえば気軽な思いで入部した部員だと思います。

活動内容を教えてください。

年3回の展示会と、それにあわせた作品の作成が主な活動となります。6月に、美術部と合同で名古屋市栄のギャラリーを借りて「芸連展」を実施。11月には大学祭に出展。12月には、矢田駅の近くにある矢田ギャラリーというスペースで単独の展示会「冬展」を行います。また、これに加えて、4年生は2月に「卒展」を催します。

毎回、展示会は、何かテーマを決めた上で作品を出品するのでしょうか?

作品作りに慣れていない1年生の数が多かった前回の「芸連展」ではテーマを設けませんでしたが、通常は一定のテーマを用意します。ちなみに、次の展示会となる大学祭では「夏の思い出」というテーマにしようと考えています。写真を撮ったり、現像をしたりと、準備をしていくには「秋の思い出」だとちょっとタイミングが遅れてしまいそうなので。

展示会には、毎回、どれくらいの来場人数があるのでしょうか?

前回の「芸連展」には初日だけで100名のお客様に来場いただけました。通常、展示期間は一週間。月曜日に搬入して火曜日スタート、日曜日に終了します。6日間の間に来場者の波はありますが、いつも多くの方々に気楽な感覚で見に来ていただけており、感謝しています。

何かPR活動を行っているのですか?

展示会場ではいつもアンケートを実施しており、ご回答いただいたことのある方には、ダイレクトメールを送付しています。また、卒業後5年以内の写真部の先輩方にも案内を出しています。

展示会以外の大きなイベントとしては、夏に合宿があると聞いています。

8月に夏合宿を実施しています。その年によって行く場所は異なりますが、皆でどこかへ遠出して写真を撮っています。今年の夏は、福井県大野市の九頭竜川という河川の上流付近でキャンプをしました。綺麗な風景にカメラを向けたり、体育館でレクリエーションを行ったりしました。

02 「写真」を「作品」とするために。

日頃はどんな活動を行っていますか?

毎週水曜日の昼休みに部会を行い、連絡事項を伝えています。展示会の前は、写真店へ一括してデータを持ち込むので、皆からデータを集めたりします。撮影を行う日としては、特に決めていません。随時、部室に部員がそろっていた際に、「ちょっと撮りに行こうか」と学内や学外の様々な場所へ撮影に出掛けたりすることはあります。

渋谷さんが入部したきっかけを教えてください。

私は中学・高校と、ずっとバスケットボール部でした。写真撮影は、どこかへ遊びに行った際に携帯電話のカメラやデジタルカメラで撮っていた程度です。でも、撮ることが楽しかったので、大学で写真部の存在を知った時、「もっと格好いい写真を撮りたい」「撮り慣れている先輩方から技術を学びたい」と思い、入部に至りました。

入部して、写真の撮り方は変わりましたか?

入部以前は、細かいことは考えずに、いつも「何となく」シャッターを切っていました。写真部に入部してからは、カメラの機能を駆使し切れてはいないですが、構図や絞り、撮った後のトリミングなどに工夫をするようになった気がします。

多くの人が集い、写真部として活動することには、どんな面白さがあると考えますか。

いつも不思議に思うのですが、同じ対象を、同じ場所で、同じ時間に撮影していても、皆、撮る写真が違うのです。部員たちの様々な目の付け所にいつも驚かされます。また、自分の写真を他の誰かに見てもらいたい、という欲求も部活動の中で撮影していると達成できます。写真を見せ合って、感想を伝え合うことも楽しいです。

展示会の存在も大きいのでしょう。

はい、その通りです。個人で撮って眺める「思い出の品」としての用途だけならば、展示する場所はアルバムになり、サイズもLサイズくらいでしょう。でも、展示会に出品するとなると、四つ切りワイドなどの大きなサイズでプリントし、額装にもこだわります。また、拡大することで、小さなサイズの時は気にならなかった部分にも配慮したくなってきます。そうやって思いを込めて作り上げた自分の作品が展示会場に飾られた瞬間は、感動すら覚えます。そして、手間のかかるモノクロ写真なら、感動はなおさら大きいです。

え、モノクロ写真も作れるのですか?

部室内に暗室があり、そこで制作ができます。モノクロ写真の現像工程を大まかに説明すると、まず、フィルムに記録された画像を印画紙へプリントするために、引き伸ばし機を用いて、印画紙に像を焼き付けます。そこから現像作業へ。主に3つの薬品により処理を行います。最初に、フィルムを水に浸してゼラチン層を膨らませます。次に、「現像液」を用いて露光した印画紙の画像(潜像)を目に見える状態へ。その後、「停止液」を使って進行する現像処理を停止させ、「定着液」によって画像を定着させます。液に浸しておく時間などを変更することで仕上がりのトーンが変わってきますので、現像処理を行う前にテストプリントを行い、ちょうど良い時間を確認するプロセスを事前に設けます。定着時間が過ぎたら、流水で水洗いし、吊して乾燥させて出来上がりです。一晩かけて乾かす工程も含めると一日ちょっとの時間が必要になります。

03 モノクロ写真がくれた新しい視点。

モノクロの写真は、手間がかかる分、達成感がありそうです。

色の濃さや大きさ、切り取り方など、様々な工夫が行えるので、自分の思い通りにできあがると、満足感はカラー写真より大きいかもしれません。また、当然ですが、工程だけでなく仕上がりにもモノクロならではの良さがあると思います。カラー写真ではそうでもないのに、モノクロ写真だとグンと奥深い魅力が出てくるモチーフ(題材)が、必ずあります。カラー写真は、普段、私たちが見ている光景に近いですが、モノクロ写真は単色です。シンプルだからこそ、カラーの視点では出しにくいメッセージ性が浮かび上がりやすいのかもしれません。

例えばどんなモチーフを撮影した時に、そう感じましたか?

最近、モノクロで撮影したモチーフでは、キャンパス内の「ゴミ捨て場」が挙げられます。写真部のメンバーと一緒にキャンパス内の様々な風景を撮り歩いている時に、その「ゴミ捨て場」を見つけて、「これはモノクロで撮ると、きっとメッセージ性のある仕上がりになる」と直感したのです。早速、モノクロで撮影したところ、単なる「ゴミ捨て場」にはない印象が引き出せました。

「これをモノクロで撮ったら魅力的になる」と想定してモチーフを選んでいるのですね。

あまり深くは考えていませんが、確かに「モノクロにしたら映えるのではないか」という推測の下、モチーフを選んでいます。考えてみれば、モノクロを撮るまでは、この視点は私にはありませんでした。写真部で身に付けた、新しい視点ではないでしょうか。

モノクロ写真への関心は、入部前から持っていたのですか?

いいえ、全くありませんでした。入部後、初めて部室に入った時に暗室があることを知り、「何だこれは?」と不思議に思った記憶があります。モノクロ写真の撮影・現像方法については、当時の部長が、希望者に教えてくれました。学んだ後は、部室に常備してあるフィルムカメラを使って繰り返し試しました。私が部長となった現在、モノクロ写真の魅力を後輩に伝えなければいけないと思いますが、残念ながら今はまだ希望者がいません(笑)。確かにカラー写真のほうがラクなので仕方ないのかなと思いますが、モノクロ写真を作り上げる達成感も、いつかは伝えたいです。

高校生へメッセージを。

大学でクラブやサークルに入部するかどうかを迷ったら、ぜひ入部することをおすすめします。入部してもしなくても大学生活はもちろん楽しめるけれど、クラブやサークルというきっかけができると、それが一つの扉となって、新しい出会いも増え、新しいチャンスにも恵まれる気がします。そこで、もし、写真に興味があり、多くの人と交流を持ちたい方はぜひ、写真部の門を叩いてください。部員だけでなく、卒業生の先輩など写真を通して様々な人脈が生まれ、就職活動の話なども聞けると思います。その中で得た繋がりや知識は、きっと自身の財産になりますよ。

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取材を終えて

部の活動風景を見せてもらうと、そこには溢れていたのは、写真部ならではのこだわりでした。皆で一つの情景を撮影し、各々の写真を見せ合う様子からは、自分が持たない新たな視点に触れていく楽しみが感じられました。モノクロ写真を仕上げるプロセスでは、モノクロだからこそ映えるモチーフ探しや、暗室の機能を駆使した、細やかな工夫がありました。入部の動機は「ステキな写真が撮りたい」という気軽な思いだったかもしれませんが、入部してからは、部員の皆さんが作っているのは単なる写真ではなく、手間をかけて作り上げた「作品」なのだと深く思わされました。興味深いお話を、ありがとうございました。