Club Interview vol.014 マンドリンクラブ 桜木 友華(さくらぎ ゆうか)さん 文学部日本文化学科4年

創部から53年目を数える伝統のクラブ。部員は20名。イタリア生まれの弦楽器・マンドリンを中心に、ギターやコントラバス、クラリネット、フルートなどのパートがそろう。演奏会を通して音楽そのものの喜びに触れ、さらに、物事をつくりあげる充実感も得られる。 奏でるのは、音楽の喜びと充実の大学生活。

01 多彩な演奏会、多様な交流。

マンドリンクラブについて教えてください。

1961(昭和36)年に創部しました。マンドリンとはイタリア生まれの弦楽器で、ピックを使って演奏します。マンドリン以外にもギターやコントラバス、クラリネット、フルートなどのパートがそろっています。現在、部員は20名(平成25年2月現在)です。男女構成は、どちらかといえば女性が多いですね。でも、最近は男性も増えてきました。

日頃の練習内容について教えてください。

練習は、毎週、月・水・金曜の放課後に、午後5時くらいからスタートしています。最初に、それぞれのパートに分かれて練習し、その後、複数のパートが集まってセクション練習を実施し、最終的に皆で総合練習を行います。演奏会の日程が近付いていれば、そこで演奏する曲に重点を置いて練習します。

年間スケジュールについて教えてください。

年に数回、演奏会を行います。単独の演奏会としては、6月にサマーコンサート、12月に定期演奏会を行っています。サマーコンサートでは来場者に耳馴染みのあるようなポピュラーな曲をメインに構成します。それに比べて、定期演奏会では、オリジナル曲がメインとなります。ポップスをマンドリンの曲に作りかえたものではなく、もともとマンドリン向けに書かれた曲です。そういった性質の違いから、定期演奏会のほうがややフォーマルな雰囲気となります。

他大学との合同の活動も行っていると聞いています。

8月に合同演奏会、10月に技術交流会を行っています。合同演奏会の正式名称は「東海学生マンドリン連盟合同演奏会」です。東海地区の8大学が集まって実施しています。一方、技術交流会は、その年度における他大学との弾き納めを意味します。他大学を交えながら学年別に分かれて演奏するので、学年同士の交流が望めます。

年に3度の合宿も行っているのですね。

合宿が多いこともこのクラブの特徴のひとつかもしれません。8月の夏合宿、11月の強化合宿、3月の春合宿があります。中でも夏合宿は長いです。丸々1週間、長野のホテルを貸し切って行い、技術の交流はもちろんですが、部員同士の親交を深めます。

02 感動して、やめられなくなる。

1年生は、どの段階から演奏会に参加するようになるのでしょうか。

基本的には、1年生がデビューするのは12月の定期演奏会からです。でも、今年はサマーコンサートから出てもらおうかという話が挙がっています。果たしてどうなるか。1年生の頑張り次第です。

入部希望者のうち、未経験者は何割くらいを占めるのでしょうか。

今、担当している楽器に対しては、ほぼ100%が未経験者です。入部当初は、楽譜を読めない段階からスタートしているメンバーも大勢います。皆、入部してから練習して腕を磨いていくのですが、4年後には、まるで別人のようにレベルアップしています。

すごいですね。特別な練習方法があるのでしょうか。

多くの先輩方が、初心者からスタートして上達していったので、ゼロから始めて上手くなっていくモデルケースがしっかりと構築されているのです。新入生たちが「できないなぁ」と、何かの壁にぶつかっている時に、「自分たちもそうだった」と先輩がアドバイスする光景を、クラブ内ではよく見かけます。

未経験者でも楽しく活動できるそうですね。

はい。特に演奏会で演奏する楽しさは別格です。初めての演奏会では、時には失敗したりすることもあるのですが、終わってみたら皆「楽しかった」と口をそろえて言います。その気持ちは、きっと音楽そのものの喜びです。この喜びを一日でも早く味わってもらいたくて、上級生は、早く新入生に演奏会デビューさせたいと思うのです。

その「喜び」は、体験しなければわからないものなのですね。

そうだと思います。華やかな舞台に上がり、大勢の仲間とともに「音を一つにして」観客に届ける時の感動は、体験した人だけが得られるものです。ぴたりと音が重なった時は、鳥肌が立ちます。

学外の先生から指導を受けていると聞きました。

作曲家の先生を技術アドバイザーとして招いています。演奏会の前などに、合奏を見てもらって指導を受けています。弾き方というよりは、曲の全体的な構成などをメインに教わっているといったほうがいいですね。また、マンドリンはあまり一般的な楽器ではないので、どうしても楽曲が限られるため、ポピュラーな曲などをマンドリン用に編曲してもらっています。

03 マンドリンは、音楽の扉。

桜木さんが入部した理由を教えてください。

新しいことをしてみたかったのです。高校時代は、吹奏楽部でクラリネットを担当していましたが、吹奏楽以外でクラリネットを使ってみたいという想いも持っていました。そんなふうに考えていた矢先、入学直後に、マンドリンクラブへ勧誘をしてもらいました。マンドリンという馴染みの少ない楽器への興味に加え、先輩方が醸し出していた非常に楽しそうな雰囲気を見て、入部を決めました。

いざ入部してみてどうでしたか。

マンドリンは面白いです。例えばマンドリンの特徴が表れる奏法として「トレモロ」という弾き方があります。単一の高さの音を連続して小刻みに演奏する技法です。マンドリンは音が早く減衰してしまう楽器なので、長く延ばす音の代用として使用します。複数のマンドリンの音が重なり合うトレモロの合奏には独特の味わいを覚えます。こうした楽器の世界観にクラリネット奏者として絡んでいくことには、今まで得られなかった面白みを得られます。また、高校の部活にはなかった大学のクラブならではの楽しさも感じています。

どんな点が高校の部活と違うのでしょうか。

高校時代は、先生から言われたことを行うだけの受け身の姿勢でした。でも、大学では、練習メニューの構成から演奏会の企画や運営まで私たち学生が主体となってやっています。自分から進んで物事を作り上げていくことは、正直、大変です。演奏会を1回実施するのには、様々な準備が必要になります。大勢の人への協力依頼、協賛金のお願い、広報活動など、いずれの作業も簡単にはいかず骨が折れます。でも、そうやって作り上げた演奏会や残すことのできた実績は、大きなやりがいをもたらしてくれます。

確かに、とても活き活きして見えます。

そうですか?ありがとうございます。結局は、マンドリンが、音楽が好きなのだと思います。だから、その世界にもっと深く、濃く、浸りたくて企画や運営といった活動にも前向きになれるのではないでしょうか。

最後に高校生へメッセージをください。

ほんの少しでも興味があったり、何となく「楽しそうだな」と思ったりしたら、ぜひマンドリンの演奏を体験してみてほしいです。現在のメンバーの中にも、気軽な感覚で入部してきた人は結構いますが、皆、マンドリンが好きになって、音楽が好きになって、どんどん上達しています。マンドリンクラブの扉は、音楽の世界へ気軽に飛び込むための扉かもしれません。

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取材を終えて

音楽とは日常的に誰もが触れているものかもしれませんが、聞いて楽しむ側と演奏して楽しませる側との間には大きな壁があると思います。でも、マンドリンという楽器、そしてマンドリンクラブには、気軽に「演奏して楽しませる」側へ飛び込むことのできる可能性があるように感じました。また、取材中、質問に答える桜木さんからは、話すことに非常に長けた印象を受けました。本文中でも書いていますが、演奏会場の企画や運営、細やかな手配を行う際に様々な相手と交渉を行っているからでしょう。音楽の楽しさに存分に触れられ、さらに人間的な成長をさせてくれるマンドリンクラブの今後の活躍を期待します。良いお話をありがとうございました。