Club Interview vol.018 演劇部「鯱」 光岡 幸輝(みつおか こうき)さん 総合政策学部3年

創部、約半世紀。大学設立時から存在する伝統のクラブ。学生が主体となって企画から運営まで行い、毎年3回の公演を実施。約3ヶ月という準備期間に、演出と舞台監督の下、キャスト、裏方が一体となって一つの作品を創り上げていく。そして今、現3年次にとって最後となる7月の夏季公演を目前に控える。 創り上げる感動を体感する“舞台”。

01 伝統のクラブ。年3回の自主公演。

演劇部について教えてください。

大学設立当時に創部され、およそ半世紀の歴史があります。部員数は20名(平成27年3月20日現在)。そのほとんどが未経験者。クラブハウス(部屋)で月・水・金曜の17時から20時まで練習しています。日頃の練習内容としては、まず発声練習をして、柔軟運動を行います。その後、主に体幹を意識した筋力トレーニングをします。それが終わったら、キャスト(役者)やスタッフワーク(裏方)など、それぞれが担当する役割に分かれて、演技の練習や、舞台づくりを行います。

年間スケジュールを教えてください。

4月に新入生歓迎会、7月に夏季公演、11月に学祭公演、3月に春季公演を行っています。ひとつの公演を創り上げるのに約3ヶ月間の準備期間が必要です。その他、他大学の演劇部や社会人劇団との交流会を年に1?2回行っています。共に練習することで、その大学または劇団の独特のトレーニング方法をお互いに学んでいます。

公演はどこで行っているのですか?

7月の夏季公演と3月の春季公演は学外のスタジオを借りて行い、11月の学祭公演は学内で実施します。スタジオは“小屋”と呼ばれているのですが、演劇にとって小屋は非常に大事な要素で、会場も演劇の一部なのです。例えば、空間が広大なら、大人数が同時に出演したり、駆け回ったりするなどの広さを活かした演技ができます。逆に、空間が小さければ観客との距離が近くなり、より細やかな演技も伝えることができます。照明についても、天井が高くなれば、より強い光を活用したほうが良いですよね。小屋の広さや形状によって、演劇の見せ方も変わってくるのです。

小屋の手配などは自分たちで行っているのですか?

もちろんです。小屋によって備えられている設備やルールが違うので、手配の作業も楽しさの一つとなります。小屋の手配だけでなく、企画から、宣伝、運営まで公演に関する全てを学生主体で行っています。代々先輩から受け継がれてきた知識や、手法、ルートを活かして実施しています。

02 それぞれの方向から創る、一つの世界。

ひとつの公演を行うまでの大まかな流れを教えてください。

まず、小屋(スタジオ)を決めます。小屋が決まったら、次は台本の選出です。戯曲集からの引用や、部員や卒業生が書いたものから選びます。今回の小屋の空間的魅力を活かしているかどうかなど、メリットとデメリットを考えながら内容を決めていきます。台本の選出を終えたら、演技や舞台美術などの表現を統括する「演出」と、スタッフの調整や進行管理を行う「舞台監督」を決めます。その後、オーディションを実施して台本に合ったキャスト(役者)が選ばれます。それ以外の部員は、スタッフワーク(裏方)を担当します。

キャストはどんな練習をしていくのでしょうか。

演出担当によっても変わりますが、基本的には2?3週間で台本を覚えて、その後、台本を見ずに動きや立ち居振る舞いの練習をする「立ち稽古」を行います。残り1ヶ月ほどの段階から、細部を修正していきます。普段の練習はクラブハウス内で行っていますが、ストーリーを通しで練習する場合は、会場での実際の動きや声・音の反響を確かめるために広めの教室を借りて行います。

スタッフワークの仕事について教えてください。

大道具、小道具、衣裳、音響、メイク、照明、制作です。それぞれの役割に分かれ、本番に向けて小屋の空間に合わせた細やかな作り込みを行っていきます。例えば大道具で言えば、一つのベンチを作るのに、最初に図面を用意して、それにふさわしい材料を準備して制作していきます。そうやって作り上げても、本番が終わればほとんどの道具を解体します。集大成となる本番の舞台を、最高の状態に創り上げることが何よりの目的なのです。

制作とは何をする役割ですか?

撮影やデザインをしてチラシやチケットを作るなど、宣伝を担当します。演劇部ホームページの更新も行っています。

本番公演は何日間行うのでしょうか。

ほとんどの場合、本番公演は週末(土・日曜)の2日間です。公演回数としては全4回。水曜から小屋に入り、3日間、道具のセッティングや演技の最終チェックなどを行い本番に向かいます。小屋で練習をスタートして初めてわかることも多いので、小屋に入ってからの期間は非常に重要です。

03 全ての人に、ぴったりの「役」がある。

光岡さんが入部したきっかけを教えてください。

中学時代、兄が高校時代に活動していた演劇部の公演を観に行ったことが興味を持ったきっかけです。しかし、私の進んだ高校には演劇部がなく、大学では演劇をやりたいと思い、関心のある学びの内容とともに演劇部のある愛知学院大学を見つけて進学を決めました。

入部してみてどうでしたか?

面白いですね。特にキャストとして舞台上で演じている時には夢中になります。実際の照明を浴びると、スイッチが入ってテンションが上がります。ただ、楽しいと同時に、常に解決すべき課題も生まれます。今、抱えている課題は、もっとリアルな演技の追究です。素の自分が出てきて表情が堅くならないように、自分の声を録音して聞くなど、台本の世界観に入り込むための訓練を行っています。

部長としてはどういう点に気を使っていますか?

ひとつ上の先輩から、「部長は常に中立でいること」という言葉を譲り受けました。表現の内容などで部内に二つの意見が生まれた時に、どちらか一方の意見に偏らないほうが良いということです。演劇部は先輩と後輩の壁もほとんどなくて非常にフラットな環境ではありますが、部長の発言は重いので一方的な決定になってしまいがちです。できるだけ部員同士の意見交換の中で決めていくほうが、表現の意味など、演劇に関する様々な考えを掘り下げることにもつながり、良い結果に結びつくと考えています。

今後の目標を教えてください。

愛知学院大学の演劇部は、毎年、7月で3年が引退するシステムとなっています。つまり、私たちにとっては2015年7月の夏季公演が最後の舞台であり、1?3年の全学年が揃って臨む最初で最後の公演となります。今までやってきたことの集大成として、最高の作品を仕上げたいと思っています。

高校生にメッセージをください。

どうか気楽に足を運んでみてください。自分に演技ができるかな?とか、大道具を作ったりできるかな?とか悩まずに、まず遊びに来てください。演劇は、様々な活動が集合して完成します。参加しているうちに、きっと自分の向いている役割が見つかり、自分の才能に気付くはずです。お待ちしています。

サムネイルをクリックしていただくと、拡大した写真をご覧いただけます。

取材を終えて

取材をしている時、光岡さんからこう言われました。「今、お座りになっているそのベンチも、大道具スタッフが手掛けたものですよ」。驚きました…。ちょっと個性的ながらも、非常に精巧に作り上げられており、ベンチとして普通に販売されていてもおかしくないクオリティでした。また、インタビューの後には、演技練習の一部を見せてもらいました。一人の部員が五十音の中の一つの音を発して、キャストがその音から連想するモチーフについて演技をするという内容で、微妙な表現への追究を感じずにはいられませんでした。このようにキャストと、スタッフワークがそれぞれに至る所からリアルを求めているからこそ、観客に感動を与えられる作品になるのですね。その醍醐味にほんの少しだけ触れさせてもらえた気がします。光岡さん、貴重な時間をありがとうございました。7月の夏季公演、頑張ってください。